50代の貯蓄額は平均・中央値でどう見るか|数字の前提と、自分の家計に置き換える4つの手順

お金の相談

この記事の要点

  • 平均でなく中央値を、同じ条件で比較する
  • 退職金・年金・ローン残高・教育費と並べ月数換算する
  • 平均より少なくても慌てず、自分の数字を先に確認する

「50代の貯蓄額は平均◯◯万円」という数字を見て、自分の残高と比べて安心したり、逆に不安になったりしたことはないでしょうか。同じ「50代の貯蓄額」でも、記事によって出てくる数字はばらばらです。それは、調査の実施主体や対象世帯(単身か二人以上か)、貯蓄に含める資産の範囲が違うために起きています。

この記事では、まず数字が食い違う理由を整理したうえで、平均と中央値のどちらを見るべきかを確認します。そのうえで、貯蓄の統計には反映されていない、退職金の見込み・年金の見込み・住宅ローン残高・これから出る教育費という自分側の変数を並べ、今の残高が自分にとって足りているのかを判定する手順まで示します。

他人の数字と比べて一喜一憂するのではなく、自分の家計に置き換えて考えるための材料として読み進めてください。

なぜ「50代の貯蓄額」は記事ごとに数字が違うのか

「50代の貯蓄額は平均○○万円」という数字を見ても、別の記事では違う数字が出てくることがあります。これは数字の出し方がいい加減なのではなく、調査そのものの前提が違うためです。実施主体・対象・定義が違えば数字も違う、という点を先に押さえておく必要があります。

数字が変わる主な要因は、次の4点です。

  • 実施主体:どの機関が実施した調査か(例:総務省統計局「家計調査(貯蓄・負債編)」)
  • 対象世帯:単身世帯を対象にした集計か、二人以上世帯を対象にした集計か
  • 金融資産非保有世帯の扱い:貯蓄がない世帯を集計に含めるか、除いて集計するか
  • 貯蓄に含める資産の範囲:何を「貯蓄」として数えるか

数字が変わる4つの要因

家計調査では、何を「貯蓄」に含めるか、負債をどう扱うかが用語の解説で個別に定義されています。含まれる資産の範囲や負債の集計方法は調査年によって解説の書き方が変わることがあるため、数字を比べる前に総務省統計局「家計調査(貯蓄・負債編)」の用語の解説で確認してください。また、対象となる世帯主の年齢区分も調査ごとに定義されているため、あわせて調査対象の定義を確認します。

数字だけを見て自分と比べる前に、「どの調査の、どの条件で集計した数字か」を確認することが、次の手順に進む前提になります。

手順①数字の出どころを確かめる

「50代の貯蓄額」の数字が記事によって違って見える理由の一つは、参照している調査そのものが違うからです。代表的な公表元は、総務省統計局「家計調査(貯蓄・負債編)」と、家計の金融資産の保有状況を調べる「家計の金融行動に関する世論調査」の2つです。

同じ50代の貯蓄額でも、見ている調査が違うという前提を、まず確かめる必要があります。数字を比べる前に、どちらの調査に基づく数字なのかを確認してください。

2つの調査を比較すると、次のような違いがあります。

2つの調査の違いを比較

調査名 実施主体 調査対象
家計調査(貯蓄・負債編) 総務省統計局 二人以上の世帯を中心に世帯主の年齢階級別で集計(単身世帯が含まれるかどうかは、確認する年の調査結果ページで対象世帯の定義を必ず確認してください)
家計の金融行動に関する世論調査 金融経済教育推進機構(J-FLEC) 全国の世帯(単身世帯・二人以上世帯それぞれ調査あり)

具体的な貯蓄額は、どちらの調査の、どの年の、どの対象世帯の数字かを確認できたものだけを次の手順で扱います。数字の大小だけで一喜一憂する前に、まず出どころを特定することが最初の一歩です。

手順②平均と中央値、どちらを見るか

出どころを確認したら、次は「平均」と「中央値」のどちらを見るかを整理します。平均は、少数でも極端に貯蓄額の大きい世帯があると、その分だけ全体の数字が引き上げられる性質があります。「自分の実感より数字が大きい」と感じるとき、平均が一部の高額世帯の影響を受けている可能性があります。

分布のちょうど真ん中の金額を知りたいときは、中央値を確認します。中央値は極端に大きい(または小さい)世帯の影響を受けにくく、平均よりも実感に近い数字になりやすい指標です。

この節の結論

  • 平均ではなく中央値、かつ自分と同じ条件の集計を見る

もう一点、同じ調査でも「金融資産を持たない世帯を集計に含めるか、除くか」によって中央値そのものが変わります(参照:家計の金融行動に関する世論調査の集計区分)。金融資産非保有世帯を含めた集計と、保有世帯だけに絞った集計とでは、対象の範囲が違う以上、出てくる中央値も別の数字になります。

中央値も条件で変わる

自分の残高と照らし合わせるときは、平均ではなく中央値を見ること、そして今見ている中央値が「非保有世帯を含む条件」か「保有世帯だけの条件」かを確認することの2点が必要です。同じ「中央値」という言葉でも、集計条件が違えば比べる相手を間違えます。次の手順③では、この統計には映らない自分側の変数を並べていきます。

手順③統計にない自分の4つの変数を並べる

ここまで見てきた平均・中央値は、あくまで同年代の他人の残高です。貯蓄残高そのものも、実は「純額」ではありません。今ある残高から、これから出ていくお金や、抱えている負債を並べて初めて、本当の位置づけが決まります。

貯蓄残高は、自分側の4変数と並べて初めて意味を持つというのが、ここでの前提です。

統計には反映されない、自分側の4つの変数は次のとおりです。

統計にない4つの変数

  • 退職金の見込み額(制度の有無や支給水準は勤務先ごとに異なります)
  • 受け取れる年金の見込み額
  • 住宅ローンの残高と完済予定年齢
  • これから出る教育費や、親の介護費の残り

退職金の見込み額を確認する手段は、勤務先の制度によって複数あります。詳しい確認方法は自分の退職金はいくらもらえるのかを確認する4つの手段にまとめています。

退職金と年金の確認方法

年金の見込み額は、ねんきん定期便やねんきんネットで自分の数字を確認できます。見方の詳細はねんきん定期便の見方と年金見込額の確認で扱っています。

この4変数を先に洗い出しておくことが、次の手順④で残高を判定に変える準備になります。

手順④自分の残高を判定に変える

手順③で並べた退職金の見込み・年金の見込み・住宅ローン残高・これから出る教育費を、今の貯蓄残高と付き合わせます。ここで初めて、貯蓄額が「自分にとって足りているか」を判定できる形になります。

残高は、月数に換算して初めて判定材料になるというのが、この手順の要点です。金額のまま見比べても、生活費の規模が違えば意味を持ちません。

判定の手順は次のとおりです。

1. 貯蓄残高から、住宅ローン残高など確定している負債を差し引く

2. 退職金の見込み額を足し戻す(見込みであることを踏まえて割り引いて見る)

3. 教育費や介護費など、これから出ると分かっている支出を差し引く

4. 残った金額を、毎月の生活費で割り、生活費の何か月分にあたるかを確認する

5. 年金の見込み額を踏まえ、不足があるとして残る就労年数で埋められるかを確認する

5つの判定ステップ

月数換算の目安には、総務省統計局「家計調査(家計収支編)」の結果表で、自分に近い世帯類型(単身か二人以上か、無職か有職か)の1か月あたり消費支出を確認し、参照値として使ってください。世帯類型によって数字が変わるため、自分の状況に近い区分の数字かどうかを確認したうえで使う必要があります。

月数換算の参照値

ここでの判定は「足りるか足りないか」を確かめる入口です。実際に必要な金額そのものは、この記事では試算しません。

必要額そのものの試算は、単身世帯なら50代独身の老後資金はいくら必要か、夫婦世帯なら50代夫婦の老後資金はいくら必要かで扱っています。

支出の内訳は老後資金の不安を5つの費目に分解する、取り崩しの年数は生活防衛資金と取り崩し年数で決める資産配分で確認できます。

平均より少なくてもやってはいけない反応

手順①〜④を確かめる前に、「平均より少ない」という数字だけを見て動いてしまうと、判断を誤りやすくなります。慌てて動く前に、手順③④で自分の数字を先に確認することが前提です。

数字だけを見て起きがちな反応には、次のようなものがあります。

やりがちな4つの反応

  • 利回りの高さだけを理由に、今ある貯蓄をまとめて別の商品へ移す
  • 根拠のないまま、日々の生活費を急に切り詰める
  • 「自分だけ遅れている」という焦りから、内容を確かめずに勧められた商品へ加入する
  • 逆に「平均より多いから大丈夫」と判断し、退職金や年金の見込みを確認しないまま安心する

これらに共通するのは、手順③で並べた退職金の見込み・年金の見込み・住宅ローン残高・これから出る教育費を確認しないまま、貯蓄額の比較だけで結論を出してしまう点です。平均より少なくても、退職金の見込みや年金の見込みを合わせれば不足がない場合もあれば、平均より多くても、住宅ローンや教育費を差し引くと不足する場合もあります。

動く前に、まず手順③④で自分の数字を並べ、月数換算までたどり着いてから判断してください。

まとめ

ここまで、①数字の出どころを確かめる、②平均と中央値を使い分ける、③統計にない自分の4つの変数を並べる、④残高を判定に変える、という4つの手順を見てきました。

「50代の貯蓄額」という言葉だけでは、自分の残高が足りているかは判定できません。調査によって前提が違う数字と、退職金の見込み・年金の見込み・住宅ローン残高・これから出る教育費という自分側の条件を並べて、初めて判定材料になります。

この記事の結論

  • 平均・中央値は、まず調査の前提(実施主体・対象世帯・非保有世帯の扱い)を確認してから見る
  • 自分の残高は、退職金・年金・ローン残高・教育費と並べて月数に換算する

手順③④で並べる数字は、記録や書類が手元にあっても、自分だけで整理しきれない場合があります。退職金や年金の見込みを踏まえたうえで相談先を探すときは、相談先を収益構造から4つの類型に分けて整理した記事を参考にしてください。

50代のお金の相談先を収益構造で見る4類型と選び方

コメント

タイトルとURLをコピーしました