親の介護費用は誰が負担するのか|50代が老後資金を守るために決める4つの線引き

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50代になると、自分自身の老後資金を考えるのと同じ時期に、親の介護費用にも向き合うことになります。「介護費用は子どもがどこまで負担しなければならないのか」「実際にいくらかかるのか」「親の年金や貯蓄で足りない場合はどうすればいいのか」。こうした疑問を抱えたまま、はっきりした基準がないまま自分の口座から立て替え始めてしまう人は少なくありません。

結論から言うと、扶養義務は「自分の生活を壊してまで負担する」性質のものではありません。まず親自身の年金・預貯金・保険といった原資を確認し、公的な負担軽減の制度を使い切ったうえで、そこから先を自分がどこまで出すのかという上限を決める。この順序を踏むことが、結果として自分自身の老後資金を守ることにつながります。

この記事では、その具体的な考え方と、負担の線引きを決める手順を整理します。

親の介護費用、子はどこまで負担する義務があるのか

「親の介護費用は子どもが払うもの」というイメージが先行しがちですが、法律上の扶養義務は、それほど重い性質のものではありません。民法第877条は、直系血族(親子など)には扶養する義務があると定めていますが、この義務は「生活保持義務」ではなく「生活扶助義務」の性質に分類されると理解されています。

生活保持義務とは、夫婦間や、親が自分の未成熟の子を養う場面のように、自分の生活水準を落としてでも相手を支える性質の義務です。これに対して生活扶助義務は、自分自身と自分の家庭の生活をまず維持したうえで、なお余力がある範囲で援助する性質の義務とされます。

つまり扶養義務があるからといって、自分や自分の家族の生活を切り詰めてまで、親の介護費用を全額負担しなければならないわけではありません。

実際にいくら負担するかを法律が一律に決めているわけではなく、親の資産状況、きょうだいの人数や状況、自分自身の家計を踏まえて個別に判断すべき事柄です。負担の考え方は家庭ごとの事情によって変わるため、具体的な金額で迷う場合は、市区町村の窓口や専門家に相談しながら決めていくのが現実的です。

親の介護に実際いくらかかるのか

一時費用・月額費用・介護期間の目安

負担の義務を確認したら、次に把握しておきたいのが金額感です。統計から目安をつかんでおくと、漠然とした不安を具体的な金額のレンジに置き換えられます。

生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)」(2024年度・2025年1月発行)によると、過去3年以内に介護を経験した人が答えた介護費用は、住宅改造や介護用ベッド購入などの一時費用が平均47.2万円、月々の費用が平均9.0万円でした。月額費用を場所別に見ると、在宅では平均5.3万円、施設では平均13.8万円と差があります。

介護を行った期間(現在介護中の人は経過期間)は平均55.0カ月(4年7カ月)で、4年を超えて介護した人は約4割にのぼります。

費用項目 平均額
一時費用(住宅改造・介護用ベッド購入等) 47.2万円
月額費用(全体) 9.0万円
月額費用(在宅) 5.3万円
月額費用(施設) 13.8万円
平均介護期間 55.0カ月(4年7カ月)

これらはあくまで平均値であり、要介護度や地域、在宅か施設かの選択によって実際の金額は変わります。自分の親のケースがどのレンジに近いかを見積もる出発点は、要介護認定を受けて介護の必要度を確認することです。

申請先はお住まいの市区町村の介護保険担当窓口で、65歳以上の第1号被保険者は介護保険被保険者証、40〜65歳未満の第2号被保険者は加入している医療保険が確認できる書類が必要になります。申請後は訪問調査と主治医意見書をもとに要介護度が決まり、そこから利用できるサービスの範囲や自己負担の目安が見えてきます。

自分が出す前に、まず「親側の原資」を確認する

費用の目安をつかんだら、次に確認すべきは自分の口座ではなく、親自身が使える原資です。実際に自己資金での立て替えがどこまで必要になるかは、親の年金・預貯金・保険・住まいの状況によって大きく変わります。ここを確認しないまま「とりあえず自分が払っておく」と動き始めると、後から負担割合を見直しにくくなります。

確認しておきたい項目は次の4つです。

確認項目 確認する内容
年金の受給額 日本年金機構から届く通知や年金事務所への照会で、年間の受給見込み額を把握する
預貯金・有価証券 生活費・介護費用に充てられる金額と、他の目的のために確保しておきたい金額を分けて把握する
生命保険・医療保険 加入の有無、介護保障に関する特約の有無、請求手続きの窓口を確認する
持ち家・不動産 自宅か賃貸か、住宅ローンの有無、将来的に活用・売却できる資産かを把握する

これらは介護が始まってから慌てて確認するのではなく、できれば元気なうちに親本人と一緒に確認しておきたい項目です。通帳や保険証券の保管場所、年金の受給額を家族が把握していないケースは珍しくなく、いざというときに「親のお金がいくらあるか分からないまま、自分の口座から立て替える」という事態につながります。

原資の全体像が把握できて初めて、公的な負担軽減の制度でどこまでカバーできるか、そのうえで自己資金がどれだけ必要になるかを具体的に見積もれるようになります。

公的に負担を下げる制度を使い切ってから、自己資金を出す

親の原資を確認したら、次は公的な負担軽減の仕組みを確認します。自己資金を出す前に、使える制度を漏れなく使い切るのが順序です。

介護保険サービスの自己負担割合は原則1割ですが、本人の所得が一定以上だと2割、さらに高いと3割になります(厚生労働省「介護保険制度の概要」)。判定は年金収入も含めた所得基準によるため、親の所得次第で割合が変わる点は事前に確認しておきたいところです。

1か月の自己負担が上限を超えた分が払い戻される「高額介護サービス費」、医療保険と介護保険の自己負担を1年間(8月〜翌7月)で合算し超過分が支給される「高額医療・高額介護合算療養費制度」もあり、上限額はいずれも所得区分に応じて段階的に設定されています(厚生労働省)。

子が休業して介護にあたる場合は、雇用保険の介護休業給付金により、休業開始時賃金日額の67%相当額が、対象家族1人につき通算93日を上限に3回まで分割して支給されます(ハローワークインターネットサービス)。

訪問看護・訪問リハビリテーションなど医療系サービスの自己負担額や、これとあわせて利用する訪問介護などの自己負担額は医療費控除の対象です。介護老人保健施設等の施設サービス費、特別養護老人ホーム等の居住費・食費の自己負担額の2分の1相当額も対象に含まれます(国税庁タックスアンサー)。

制度 軽減の内容 確認先
介護保険の自己負担割合 所得に応じ1〜3割(原則1割) 厚生労働省
高額介護サービス費 月の自己負担上限超過分を払い戻し 厚生労働省
高額医療・高額介護合算療養費 医療・介護の年間合算超過分を支給 厚生労働省
介護休業給付金 賃金日額67%を通算93日・3回まで分割支給 ハローワーク
医療費控除 医療系サービス等の自己負担額を所得控除 国税庁

これらは自動適用ではなく申請が必要な制度もあります。自己資金を検討する前に、市区町村窓口やケアマネジャーに適用状況を確認しておくと安心です。

自分の老後資金を守るための「4つの線引き」の決め方

ここまで、親の介護費用を負担する前に確認しておきたい手順を見てきました。最後に必要なのは、実際に自分がどこまで出すのかという上限を、あらかじめ自分で決めておくことです。線引きが曖昧なまま出費を続けると、気づいたときには自分の老後資金が想定より大きく取り崩されている、という事態になりかねません。

決めておきたいのは次の4点です。

線引き 決めておく内容
誰の口座から出すか 親の口座から出す部分と、自分が立て替える部分を最初に分けておく
月いくらまでか 自分の家計・老後資金から出せる上限額を先に決めておく
いつまでか 期間や見直しのタイミング(親の資産が尽きたら見直す、など)をあらかじめ決めておく
きょうだい間でどう記録・分担するか 立て替えた金額を記録し、誰がいくら負担しているかを共有しておく

この4点は、介護が始まってから慌てて決めるよりも、始まる前、あるいは始まった直後に一度話し合っておくほうが、後々の負担の偏りやきょうだい間の行き違いを防ぎやすくなります。

きょうだいがおらず単身で親の介護に向き合う場合は、線引きの相談相手がいない分、自分ひとりで上限を決めて記録しておく必要性がより高くなります。単身世帯の老後資金の考え方もあわせて確認しておくと、判断の軸を作りやすくなります。

自分の老後資金全体を費目ごとに見直したい場合は、老後資金を5つの費目に分解して考える記事も参考にしてください。親の介護費用への備えも、その費目のひとつとして位置づけられます。

介護費用の線引きを決めても、自分の老後資金がそれに耐えられるかは別の問題です。収入側と支出側の数字を並べて確認したい場合は、年金・貯蓄の無料相談(ガーデン)のような窓口もあります。

年金の見込み額と、介護で想定される持ち出しを持ち込むと、不足額の考え方を整理してもらえます。相談は無料ですが、未成年・学生・無職の方は対象外とされています。すでに退職している場合は、申込の前に利用できるかどうかを確認してください。

面談は1時間程度が想定されています。

まとめ

ここまで見てきたように、親の介護費用は「とりあえず自分が払う」ところから始めると、あとで負担の見直しがしづらくなります。順序を踏むことが大切です。まず扶養義務の性質を確認し、自分の生活を壊してまで負担する義務ではないことを前提に置きます。

次に一時費用・月額費用・介護期間の目安から、必要になりそうな金額のレンジをつかみます。そのうえで親自身の年金・預貯金・保険・持ち家といった原資を確認し、介護保険の自己負担割合や高額介護サービス費、介護休業給付などの公的な仕組みを使い切ります。最後に、誰の口座から・月いくらまで・いつまで・きょうだい間でどう記録するかという4つの線引きを、自分自身で決めておきます。

この順序は、親の介護費用だけでなく、自分自身の老後資金の設計にも直結します。親の介護でどこまで出すかが曖昧なままだと、退職金や年金を含めた自分の老後資金の見通し自体が立てにくくなるためです。親の介護費用の負担判断と、自分の老後資金づくりは切り離せない関係にあります。

両方を同時に見据えて相談したい場合は、どこに相談すればよいかを整理した記事もあわせて確認しておくと、判断の材料が揃います。

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