お金の相談に行く前に ─ 何を整理し、何を持っていくか

お金の相談

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この記事の要点

  • 家計の現在地(収入・支出・資産など)を一枚に整理する
  • 持っていく資料(残高・保険証券など)を一覧にする
  • 聞きたいことを3つに決めておく

お金の相談に行こうと決めた。ここまで来た方は、もう半分進んでいます。ただ、手ぶらで相談の席に着くと、返ってくるのは一般論になりがちです。相手はあなたの家計も、資産の状況も、何に困っているかも知りません。知らない相手にできるのは、当たり障りのない話だけです。「まずは家計の見直しから」「NISAも選択肢ですね」──どこかで聞いたような答えで、時間が終わってしまう。

これは相談員の質の問題ではありません。材料がなければ、誰が相手でも具体的な答えは出せない、というだけのことです。逆に言えば、こちらが準備した分だけ、相談は「あなた専用」の答えに変わります。同じ一時間でも、持っていくものが違えば、中身がまるで変わる。

だから、「とりあえず無料相談へ」と席に着く前に、少しだけ立ち止まります。目先の安心に飛びついて予約を入れるより先に、自分の現在地を見えるようにしておく。ここが整っていないと、相談は霧の中の会話になります。ちなみに、無料の相談がどういう仕組みで成り立っているかを先に知っておきたい方は、無料FP相談は怪しい?確認すべき7つのポイントを読んでおくと、席に着く前の見取り図になります。

この記事は、特定の相談サービスを勧めるものでも、相談先の選び方を解説するものでもありません。相談に行くと決めた方が、行く前に自分の側で何を整えておけばいいか。その準備を、3つの手順にまとめました。

先に結論 ─ 相談前にやることは3つ

細かい話に入る前に、やることを先に置きます。お金の相談に行く前にやることは、次の3つだけです。

1. 家計の現在地を、一枚に整理する(収入・支出・資産・負債・将来の見込みを並べる)

2. 持っていく資料を、一覧にする(手元の書類を集めて、抜けを防ぐ)

3. 聞きたいことを、3つに決めておく(相手に流されず、こちらの目的から逆算する)

この3つに共通するのは、相談の主導権を自分の側に置く、という一点です。準備がないと、相談は相手のペースで進みます。準備があると、相手はあなたの状況に合わせて話すしかなくなります。順番に見ていきます。

① 家計の現在地を、一枚に整理する

最初にやるのは、自分の家計の「現在地」を一枚に並べることです。地図で言えば、目的地の前に「いま自分がどこにいるか」を確かめる作業です。ここが分からないまま相談に行くのは、現在地を隠したまま道を尋ねるようなものです。

並べるのは、大きく5つです。

  • 収入:毎月どのくらい入っているか
  • 支出:毎月どのくらい出ているか
  • 資産:預貯金や運用しているお金が、だいたいいくらあるか
  • 負債:住宅ローンなど、返済が残っているものはいくらか
  • 将来の見込み:年金や退職金が、この先どのくらい見込めそうか

金額はざっくりで十分

大事なのは、金額を完璧に揃えようとしないことです。一円単位で正確である必要はありません。「毎月の支出はだいたい30万くらい」「預貯金は数百万」といったざっくりした把握で十分です。細かい数字にこだわって手が止まるより、粗くてもいいから一枚にまとまっている方が、相談ではずっと役に立ちます。

将来の見込みについても、いま分かる範囲で構いません。年金や退職金がいくらになるかは、この段階でぴたりと出す必要はなく、「確認できる書類がある」ことを思い出しておくくらいで十分です(資料は②で触れます)。分からない項目は「分からない」と書いておく。その「分からない」こそ、相談で聞くべきことの候補になります。

数字が揃うほど、相談は「あなた専用」に近づきます。現在地が見えていれば、相手は「あなたの場合はこうです」と話せます。見えていなければ、「一般的にはこうです」で終わる。この差は、準備に使う30分で決まります。

なお、そもそも自分が何にいちばん不安を感じているのかがはっきりしない、という方は、現在地を整理する前に不安そのものをほどいておくと進めやすくなります。漠然とした老後のお金の不安を費目に分けて見る方法は、老後資金が不安な50代へ ─ 漠然とした不安を「5つの費目」に分解するにまとめてあります。

② 持っていく資料を、一覧にする

現在地を一枚にまとめると、その裏づけになる書類が必要になります。頭の中の数字だけで話すより、実際の書類があった方が、相談は具体的に進みます。ここでやるのは、手元にある書類を集めて、一覧にすることです。

相談の種類を問わず効く、汎用の持ち物リストを挙げておきます。

  • 運用しているお金の残高がわかるもの(証券会社などの残高が確認できる書類や画面)
  • 加入している保険の内容がわかるもの(保険証券など、契約内容が書かれた書類)
  • 年金の見込みを確認できる書類(毎年送られてくる、年金の見込みが載ったもの)
  • 返済が残っているものの明細(住宅ローンなどの残高や返済予定がわかる書類)
  • 直近の収入がわかるもの(給与や、受け取っている年金の額がわかる書類)

ここでのコツは、完璧に揃えようとしないことと、揃わないものは「揃わない」と分かった状態で行くことです。全部が手元になくても、相談には行けます。むしろ「これが見つからない」という状態自体が、相談で確認すべきことのヒントになります。

もう一つ。書類の中身を自分で読み解こうとして、身構える必要はありません。年金の見込みが載った書類も、いまの段階では「これで将来の見込みが確認できるらしい」と分かっていれば十分です。中身の細かい読み方は、相談の場で一緒に見てもらえます。持っていくこと自体に意味があります。手元の書類を封筒か一つのフォルダにまとめておくだけで、当日の相談は驚くほど進みます。

③ 聞きたいことを、3つに決めておく

ここが、相談前の準備でいちばん大事なところです。①と②が「自分の状況を見せる準備」なら、③は「自分が何を持ち帰るか」を決める準備です。

相談の席で、受け身で相手の話を聞いているだけだと、話は相手のペースで進みます。相手のペースというのは、多くの場合、相手が説明しやすいことや、相手が扱いたいものに沿った流れです。悪意がなくても、そうなります。用意された質問がないと、こちらは相手が差し出した話に「はい」「なるほど」と応じるだけになり、気づけば当初の悩みと違う話で一時間が終わっている、ということが起きます。

これを防ぐのが、「聞きたいこと3つ」を先に決めておくことです。3つでいいのか、と思うかもしれません。多すぎると、当日ぜんぶは聞けません。本当に知りたいことを3つに絞る方が、一つひとつ深く聞けます。

ゴールから逆算して質問を絞る

質問の作り方には、順番があります。いまの条件から「何を聞こうか」と考えるのではなく、自分がどうなっていたいか、というゴールから逆算するのがコツです。多くの人は、目の前の商品や制度の説明から質問を組み立てます。そうではなく、まず「相談が終わったとき、何が分かっていれば来た甲斐があったか」を先に決める。そこから逆算すると、聞くべきことは自然に絞られます。

たとえば、こんな順で考えます。

1. ゴールを一つ書く:「この先の暮らしで、いちばん心配なことを一つ挙げると?」(たとえば、働き方が変わった後の生活が回るか、など)

2. そのために知りたいことを引き出す:そのゴールに対して、いま自分に足りていない情報は何か。①で「分からない」と書いた項目が、そのまま候補になります。

3. 3つに絞る:出てきた疑問の中から、これだけは今日聞いて帰りたい、というものを3つ選ぶ。

質問は、具体的であるほど具体的な答えが返ります。「老後、大丈夫でしょうか」ではなく、「いまの家計のまま働き方が変わったら、毎月いくら足りなくなりそうですか」。抽象的な問いには一般論が、具体的な問いには具体的な答えが返ってきます。①で現在地を数字にしておくと、この「具体的な問い」が作りやすくなります。3つの準備は、こうしてつながっています。

そして、ゴールから逆算した質問を手元に持っていくこと自体が、相談を自分の側に引き戻します。相手が別の話を始めても、「そのうえで、さっきの3つはどうでしょう」と戻せる。質問リストは、話が逸れたときに帰ってこられる目印になります。

補足 ─ 相談の形で、持ち物が少し変わる

最後に、細かいですが実務的な補足を一つ。相談を対面で受けるか、オンラインで受けるかによって、持ち物の形が少し変わります。

対面なら、書類は原本や紙で持っていくと、その場で一緒に見てもらえます。オンラインなら、事前に共有できるデータにしておくか、画面に映せるよう手元に開いておくと当日スムーズです。どちらも、揃えるものの中身は変わりません。①と②で準備したものを、相談の形に合わせて持ち運べる状態にしておくだけです。当日の段取りとして押さえておけば十分です。

ここまでの準備ができていれば、相談は十分に自分のものになります。

相談先がまだ決まっていない場合は、年金・貯蓄の無料相談(ガーデン)のように年金・老後資金・貯蓄を入口にした無料の窓口もあります。

整理した家計の現在地と、聞きたいこと3つを持ち込む前提で臨むと、限られた時間を有効に使えます。相談は無料ですが、未成年・学生・無職の方は対象外とされています。すでに退職している場合は、申込の前に利用できるかどうかを確認してください。

面談は1時間程度が想定されています。

まとめ ─ 準備した分だけ、相談は自分のものになる

お金の相談に行く前にやることは、3つでした。家計の現在地を一枚に整理する。持っていく資料を一覧にする。聞きたいことを3つに決めておく。どれも、専門知識のいらない作業です。かかるのは、せいぜい相談前の30分から1時間ほど。その準備が、相談一時間の中身をまるごと変えます。

準備のないまま席に着けば、返ってくるのは一般論です。現在地を見せ、書類を並べ、ゴールから逆算した質問を持っていけば、相手はあなたの状況に合わせて話すしかなくなります。相談を「あなた専用」の時間にできるかは、行く前の準備で決まります。目先の安心で予約を入れる前に、まず自分の現在地を一枚にしてみてください。

次に読むと理解が深まる記事

そして、自分側の準備が整ったら、次に考えるのは「どこに相談するか」です。相談先にはいくつかの型があり、収益構造によって向き不向きが分かれます。目的別にどの型が合うかは、50代のお金の相談先はどこがいい?収益構造で見る4類型と選び方にまとめてあります。

あわせて、目の前の相手が信頼できるかを相談の場で確かめる物差しは、50代のお金の相談先、失敗しない選び方 ─ 相手を見極める7つの基準にまとめました。自分を整え、相手を選ぶ。この順番なら、相談は一般論で終わりません。

準備が整ったら、次に気になるのは「申し込んだ後、実際に何が起きるか」だと思います。申込から面談当日、相談後までの流れは、FP相談の流れを解説で先に確認しておけます。

なお、自営業の方は会社員と異なり退職金という前提がそもそもありません。その場合の老後資金の組み立て方は、自営業の50代に退職金はない ─ その前提で老後資金をどう設計するかで扱っています。

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