50代になり、ねんきん定期便で将来の受給見込み額を確認する機会が増えてきます。ただし、この見込み額には、年下の配偶者がいる世帯にだけ関係する「加給年金」の上乗せ分が含まれていません。定期便はあくまで、これまでの加入実績にもとづく年金額だけを示しているためです。
加給年金は、本人の厚生年金の加入期間が原則20年以上あり、65歳になった時点で生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合などに、老齢厚生年金へ上乗せされる制度です。配偶者が65歳になると支給は終わり、その後は配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」が付く場合があります。
ただし振替加算には配偶者の生年月日による対象要件があり、繰下げ受給を選んだ場合や配偶者の年金加入状況によっては、そもそも支給されないケースもあります。
この記事では、加給年金と振替加算について、支給される条件、金額の考え方、支給が終わるタイミング、そして支給されない・止まるケースまで、公的資料にもとづいて整理します。
この記事の要点
- ねんきん定期便の見込み額に加給年金は含まれない
- 支給には加入期間20年以上など3条件が必要
- 配偶者が65歳になると支給終了、振替加算に移る場合も
加給年金とは何か|ねんきん定期便に載らない上乗せ
ねんきん定期便を見て、将来の年金額をおおよそ把握したつもりになっている人は多いはずです。しかし、その見込み額には含まれていない上乗せがあります。それが「加給年金」です。
加給年金は、老齢厚生年金に加算される制度です。年下の配偶者がいる世帯の一部が対象になり、老齢厚生年金を受け取り始めるタイミングで、本来の年金額に上乗せがつきます。
ここで見落としやすいのが、ねんきん定期便に記載されている見込み額は、あくまでこれまでの厚生年金加入実績にもとづいて計算された年金額だという点です(ねんきん定期便の見方であらためて整理しています)。加給年金や、このあと説明する振替加算は、この見込み額には含まれていません。
つまり定期便の数字だけを見て「これが将来受け取る年金額のすべて」と考えてしまうと、年下の配偶者がいる世帯では、実際の受給額との間にズレが生じる可能性があります。
自分の世帯がこの上乗せの対象になるのかどうかは、支給される条件を確認しなければ判断できません。次の項目から、加給年金がもらえる条件を順番に見ていきます。
加給年金がもらえる3つの条件
加給年金は、誰にでも自動的につく上乗せではありません。日本年金機構の案内によれば、支給には主に次の条件がそろっている必要があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 本人の加入期間 | 厚生年金の被保険者期間が原則20年以上であること |
| ② 配偶者・子の年齢と生計維持 | 65歳到達時点(または定額部分の支給開始時点)で、生計を維持している65歳未満の配偶者、または一定年齢までの子がいること |
| ③ 配偶者・子の収入 | 配偶者・子の前年収入が850万円未満(所得655.5万円未満)であること |
このうち①は、本人がこれまでどれだけ厚生年金に加入してきたかで決まるため、自営業期間が長い、転職で厚生年金加入が途切れていた、といった人は該当年数に届いていない場合があります。②の「生計を維持されている」配偶者・子という条件は、収入だけで一律に線引きされるものではなく、③の収入要件とあわせて判断される点にも注意が必要です。
なお子については、加算の対象となる年齢に上限があります。18歳到達年度の末までの子、障害等級1級・2級に該当する子であれば20歳未満までが対象です。子のいる世帯では、この年齢要件も合わせて確認しておく必要があります。
これらの条件は、本人の年金記録と配偶者・子それぞれの状況を照らし合わせて初めて判断できるものです。次の項目では、条件を満たした場合に実際いくら上乗せされるのかを見ていきます。
加給年金はいくらもらえるのか|配偶者加給年金額と特別加算
加給年金の金額は、一律の1本額ではありません。日本年金機構の案内によれば、「配偶者加給年金額」に、本人の生年月日に応じた「特別加算額」が上乗せされる二段構えの仕組みになっています。
| 区分 | 金額の決まり方 |
|---|---|
| 配偶者加給年金額(本体) | 65歳未満の配偶者がいる場合に加算される基本額 |
| 特別加算額 | 本人の生年月日に応じて区分が分かれ、上乗せされる額が変わる |
| 子の加算額 | 対象となる子1人目・2人目と、3人目以降とで加算額が異なる |
このように「本体+特別加算」「子の人数」で最終的な上乗せ額が決まるため、同じ「配偶者がいる」世帯でも、本人が何年生まれかによって受け取る額は変わります。
なお、これらの金額はいずれも年度ごとの改定対象です。年金額は物価や賃金の変動にあわせて毎年度見直されるため、本記事の執筆時点の額をそのまま数年後にも当てはめることはできません。自分の受給見込みに関わる具体的な金額を確認したい場合は、日本年金機構やねんきんネットで、その年度の最新額を確認する必要があります。
加給年金はいつ終わるのか|配偶者が65歳になったら
加給年金は、本人が受け取り続ける限りいつまでも上乗せされ続けるものではありません。日本年金機構の案内によれば、加給年金は配偶者が65歳に到達した月で支給が終了します。
ここで見落としやすいのが、加給年金が終わるタイミングを決めるのは本人の年齢ではなく、配偶者の年齢だという点です。本人が65歳から老齢厚生年金を受け取り始めた場合、配偶者が65歳になるまでの期間だけ加給年金が上乗せされ、配偶者が65歳になった月からは上乗せがなくなります。
年下の配偶者との年齢差が大きいほど、加給年金が上乗せされる期間は長くなり、年齢差が小さければその分短くなります。
つまり、年下の配偶者がいる世帯の年収は、一定の金額がずっと続くわけではなく、配偶者が65歳になる年を境に段差状に変わることになります。老後資金の試算をねんきん定期便の見込み額だけで組み立ててしまうと、この段差を織り込まないまま計画を立ててしまいかねません。加給年金が終わったあと配偶者側にどのような扱いがあるのかは、次の項目で確認します。
振替加算とは|1966年4月1日生まれが境目
加給年金は配偶者が65歳になった時点で終わりますが、そこで世帯への上乗せがすべて消えるとは限りません。日本年金機構の案内によれば、一定の要件を満たす配偶者には、その後、配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」が加算されます。加給年金が本人の年金に上乗せされるのに対し、振替加算は配偶者の年金に加算される点が異なります。
ここで確認しておきたいのが対象要件です。日本年金機構の案内では、振替加算の対象となるのは、配偶者の生年月日が1926年4月2日から1966年4月1日までの間である場合とされています。つまり現在の50代は、生年月日によって振替加算の対象になる人とならない人がちょうど分かれる世代にあたります。
自分の配偶者がこの生年月日の範囲に入っているかどうかは、加給年金の有無だけを見ていても分からないため、別途確認しておく必要があります。
なお振替加算の金額は一律ではなく、配偶者の生年月日に応じて段階的に少なくなっていく仕組みになっています。具体的な金額の区分は日本年金機構の案内ページに一覧で示されているため、該当する可能性がある場合は、そちらで自分の配偶者の生年月日にあたる額を確認することになります。
加給年金が支給停止・消えるケース|繰下げ受給・配偶者の厚生年金
ここまでの条件を満たしていても、加給年金がそもそも支給されない、あるいは途中で止まってしまうケースがあります。該当すると思い込んだまま計画を立てると、見込みとのズレが生じるため、あわせて確認しておく必要があります。
繰下げ受給を選んだ場合
まず繰下げ受給を選んだ場合です。日本年金機構の案内によれば、老齢厚生年金を繰下げ受給する場合、繰下げ待機中は加給年金が支給されません。65歳時点で条件を満たしていても、受給開始を遅らせている間は加給年金の上乗せも止まったままになるということです。
繰下げによる増額をどう考えるかは、この間加給年金がつかないことも含めて判断する必要があり、その判断軸は繰下げ受給の損益分岐点を扱った記事で確認できます。
配偶者側の年金加入状況によるケース
次に配偶者側の年金加入状況です。日本年金機構の案内によれば、配偶者が厚生年金の被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や、障害年金を受けられる間は、加給年金は支給停止となります。つまり配偶者自身が長く厚生年金に加入して働いてきた場合、他の条件を満たしていても支給停止になることがあります。
配偶者の就労状況によって年金の受け取り方がどう変わるかは、在職老齢年金の仕組みを扱った記事とあわせて確認しておくと判断しやすくなります。
このほか、離婚・死亡・配偶者の収入が一定額を超えた場合にも、加給年金は対象外となります。支給される条件と、支給が止まる条件はどちらも本人だけでなく配偶者の状況に左右されるため、どちらか一方だけを見て判断しないことが必要です。
自分の世帯が該当するか確認する方法
ここまでの条件は、本人の年金記録と配偶者の生年月日を実際に突き合わせて初めて判断できるものです。感覚や思い込みだけで「該当する」「該当しない」と決めてしまうと、老後資金の見込みを取り違えることになりかねません。
まず確認したいのは、本人の厚生年金の被保険者期間です。ねんきんネットに登録すると、これまでの加入記録を月単位で確認でき、原則20年以上という基準に届いているかどうかの目安になります。ねんきん定期便にも加入期間の記載はありますが、年に一度届いた時点の情報のため、直近の状況を確認したいときはねんきんネットの方が向いています。
次に確認したいのは、配偶者の生年月日です。振替加算の対象になるかどうかは配偶者の生年月日で決まるため、加給年金の条件を満たしているかどうかとは別に、この日付を把握しておく必要があります。
これらを確認したうえで、自分の世帯が該当しそうだと分かった場合は、年金事務所や年金相談の窓口で、世帯単位での受給計画を具体的に確認しておくと、加給年金が終わったあとの見通しも含めて把握しやすくなります。相談先の選び方については、こちらの記事で整理しています。
まとめ
加給年金と振替加算は、すべての世帯に一律で関係する制度ではありません。本人の厚生年金加入期間、配偶者の年齢、配偶者の生年月日、収入の状況など、複数の条件がそろって初めて対象になるかどうかが決まる仕組みです。同じ「年下の配偶者がいる」世帯でも、条件の組み合わせ次第で、上乗せがある世帯とない世帯に分かれます。
ここまで見てきたとおり、加給年金は配偶者が65歳になった時点で終わり、その後の振替加算も配偶者の生年月日によって付く場合と付かない場合があります。さらに繰下げ受給や配偶者の就労状況によっては、条件を満たしていても支給が止まることがあります。
つまり「該当するはず」「もう関係ないはず」といった思い込みだけで判断できる制度ではなく、自分の世帯の記録と配偶者の状況を照らし合わせて初めて答えが出るものです。
将来の受給見込みを具体的に組み立てたい場合は、ねんきん定期便やねんきんネットの数字を出発点にしつつ、それだけで完結させず、年金事務所や年金相談の窓口で自分の世帯にあてはめた確認をとることが、老後資金の計画を立てるうえでの次の一歩になります。


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