退職金専用の定期預金は本当に得か|50代が優遇金利プランで確認する4つの数字

お金の相談

退職金を受け取ると、振込先に指定した銀行や信託銀行から「退職金専用の定期預金」として、通常よりも高い年利をうたう優遇金利プランの案内を受け取ることがよくあります。表示されている年利の数字だけを見ると有利に思えますが、実際に受け取る利息の額は、優遇金利が適用される期間や対象になる金額の上限、そして利息にかかる税金によって、印象よりかなり小さくなることがあります。

さらに、投資信託や保険とのセットが優遇の条件になっている場合は、定期預金とは性質の違うコストが同じプランの中に含まれていることもあります。

この記事では、案内を受け取った時点で、申込む前に自分で確認しておきたい4つの数字を整理します。①優遇金利が続く期間と対象になる金額の上限、②利息から差し引かれる税金、③セット条件になっているコスト、④預金保険で守られる範囲です。特定の金融機関や金利の水準を勧める記事ではありません。

手元の案内書面と照らし合わせながら、申し込むか、いったん保留にするかを自分で判断するための材料として、順番に見ていきます。

この記事の要点

  • 優遇金利は期間・上限・税金で目減りする
  • セット条件のコストは定期預金と別に見る
  • 1,000万円超は預金保険の対象外になる

退職金専用の定期預金とは何か、なぜ受け取った直後に案内されるのか

退職金専用の定期預金は、給与振込口座や退職金受取口座を持つ銀行・信託銀行が、退職金という大きな金額が入金されたタイミングに合わせて案内する、期間限定の優遇金利プランです。通常の定期預金よりも高い年利が表示されているため、同じ預けるなら少しでも有利な方を選びたいと考えるのは自然な流れです。

金融機関がこのタイミングで案内する狙い

なぜ退職金を受け取った直後というタイミングで案内が来るのかといえば、金融機関にとって、まとまった資金がその口座に入金された瞬間が、新たに預かる資産を獲得できる数少ない機会だからです。すでに他の金融機関で運用している資金を動かしてもらうよりも、これから預け先を決めようとしている退職金を自行に留めてもらうほうが、声をかけやすいという事情があります。

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退職金2000万円、銀行に相談する前に整理すべきことで触れたように、相談に行く前に自分の資金の使い道や全体像を整理しておくと、この案内を受け取った時点でも判断がぶれにくくなります。

また、一時金と年金どちらで受け取るべきかで受取方法をすでに決めている場合は、実際に入金される金額が具体的に見えている分、優遇金利プランの上限額と照らし合わせやすくなります。

表示されている年利の数字は、あくまで1年間預けた場合の率です。実際に受け取る利息の額を知るには、優遇される期間、対象になる金額の上限、差し引かれる税金、セットになっている商品のコスト、そして預金保険で守られる範囲という数字を、順番に自分で確認していく必要があります。次の項目から、その4つの数字を一つずつ見ていきます。

数字①優遇金利が続く期間と、対象になる金額の上限を確認する

案内書面に書かれている年利は、1年間預けた場合の年率表示です。この年率が適用される期間は金融機関や商品によって異なり、期間が終わると通常の金利に戻る仕組みになっています。まず確認すべきなのは、優遇金利が適用される期間、退職金の受取からいつまでに申し込む必要があるかという期限、そして優遇の対象になる金額に上限があるかどうかの3点です。

上限が設定されている場合、退職金の全額ではなく一部だけが優遇の対象になり、超えた分は通常金利で計算されることがあります。

これらが分かれば、実際に受け取る利息のおおよその額は「元本×年利×優遇期間(月数)÷12」で計算できます。あくまで仮の数値を当てはめた計算例ですが、手元の案内書面の数字に置き換えて自分で計算してみると、表示されている年利の高さと、実際に受け取る利息の額の差が具体的に見えてきます。

項目 仮の設定値(計算例)
優遇対象の元本 1,000万円
表示されている年利 1.0%
優遇金利が続く期間 3か月
受取利息の概算 1,000万円×1.0%×3÷12=2.5万円

この金額は税金が差し引かれる前の概算です。実際に手元に残る額については、次の項目で確認します。

数字②利息から差し引かれる税金を計算に入れる

前の項目で計算した受取利息の概算額は、税金が差し引かれる前の金額です。預貯金の利子は、給与や他の所得と合算せず一定の税率だけを差し引く源泉分離課税の対象で、所得税15%に復興特別所得税0.315%が上乗せされ(国税庁「利息を受け取ったとき(利子所得)」)、これに住民税5%を合わせると合計20.315%が利息から自動的に差し引かれます。

案内書面に表示されている年利は、この税金が引かれる前の率であることをまず押さえておく必要があります。

先ほどの計算例(元本1,000万円・年利1.0%・優遇期間3か月で受取利息2.5万円)に、この税率を当てはめると次のようになります。

項目 仮の設定値(計算例)
受取利息(税引前) 2.5万円
税率(所得税・復興特別所得税・住民税合計) 20.315%
差し引かれる税額 約5,079円
手取りの利息(概算) 約1万9,921円

表示されている年利の数字と、口座に実際に入金される利息の額との間には、この税率分の差が常に存在します。優遇金利プランの有利さを比較する際は、年利そのものではなく、この手取りベースの金額で考える必要があります。

数字③セット条件のコストを分けて見る

投資信託や保険とのセット条件のコストは、定期預金部分と分けて見ます。優遇金利プランの中には、投資信託や保険への加入をセット条件にしているものがあります。この場合、優遇金利で増える利息と、セットになっている商品のコストを、同じ「定期預金の話」としてひとまとめに考えてしまうと、比較を誤ります。

投資信託・保険それぞれの内訳

投資信託には、購入時にかかる手数料、保有している間差し引かれ続ける信託報酬、解約時に差し引かれる信託財産留保額などのコストがあり(資産運用業協会)、預けた元本は保証されておらず、市場の動きによって増えることも減ることもあります(金融庁)。定期預金部分の元本が基本的に変わらないのに対し、セットになっている投資信託の元本は変動するという点で、両者は性質の異なる商品です。

保険がセットになっている場合も同様に、契約時にかかる費用や、途中で解約した場合に払込んだ額を下回る可能性があるかどうかを、定期預金側の優遇金利とは別の項目として確認する必要があります。

販売会社には、顧客本位の業務運営の一環として、こうしたコストを分かりやすく説明することが求められています(金融庁「顧客本位の業務運営に関する原則」)。案内を受けた際は、優遇金利によって増える利息の額と、セット商品側にかかる初期コストを、それぞれ別の数字として書き出してから比べる姿勢が役立ちます。

数字④預金保険で守られる範囲を確認する

退職金専用の定期預金は、優遇金利を受けるために元本の多くを一つの金融機関にまとめて預けることになりがちです。ここで合わせて確認しておきたいのが、預金保険制度によって保護される範囲です。

預金保険制度で保護されるのは、1つの金融機関につき1人の預金者あたり、元本1,000万円とその利息等までで、無利息・要求払い・決済サービスを提供する決済用預金は全額が保護の対象になります(預金保険機構)。

1,000万円を超えて預ける場合の注意点

つまり、退職金の額が1,000万円を超える場合、優遇金利プランに全額をまとめて預けると、その超過分は預金保険制度による保護の範囲外になります。優遇金利によって増える利息の額と、保護の範囲を超えて預けている金額が万一のときにどう扱われるかは、別の論点として分けて考えておく必要があります。

1つの金融機関にどこまで資金を集中させるかは、表示されている優遇金利の有利さだけでなく、この保護の範囲も踏まえたうえで確認しておきたい数字です。

その場で決めない、という選択肢を持つ

優遇金利プランの案内に申込みの期限が示されている場合、窓口や電話でその場で申込書への記入を求められると、期限が迫っているように感じて判断を急いでしまいがちです。しかし、ここまでの4つの数字を自分の案内書面に当てはめて確認し終えるまで、その場で結論を出さずに一度持ち帰るという選択肢は実在します。

持ち帰る際の伝え方

持ち帰る際の伝え方としては、断る・断らないをその場で表明する必要はなく、「条件を自分で確認してから返事をしたい」「他の預け先とも比較してから決めたい」と伝えれば足ります。期間内であれば後日あらためて申込みできるかどうか、その場での即答が必須の手続きかどうかは商品によって異なるため、案内書面や窓口で個別に確認しておきたい点です。

高齢者や退職金を受け取った直後の世代を含め、金融商品の勧誘や契約内容に関する相談は国民生活センターに実際に寄せられています(国民生活センター)。

判断を急がされていると感じたときや、案内された内容だけでは自分で決めきれないと感じたときは、その場で結論を出さず、相談先はどこがいいか(収益構造で見る4類型)を参考に、複数の相談先を比較してから判断する進め方もあります。

優遇期間が終わったあとの置き場所を先に決めておく

優遇金利プランは、あくまで期間限定です。この期間が終わると金利は通常の水準に戻ります。その後の資金の扱いは金融機関や商品によって異なり、手続きをしなければそのまま同じ金融機関の普通預金や通常の定期預金に置かれ続けるケースもあるため、案内書面で確認しておく必要があります。

申込みの時点では優遇期間中の利息にばかり目が向きがちですが、実際に置き場所の判断が必要になるのは、むしろ優遇期間が終わった後です。

優遇期間が終わったらどう判断するか

優遇期間の終了時期は案内書面にあらかじめ記載されているため、そのタイミングで資金をどう扱うかを、申込む前の段階である程度考えておくことができます。同じ金融機関に置き続けるのか、他の預け先も含めて比較するのか、あるいは運用に回すのかは、優遇期間が終わってから急いで決めるより、申込み時点で方向性だけでも決めておくほうが判断しやすくなります。

とくに、預けている金額が大きく、預金保険で保護される範囲を超えている場合、優遇期間の終了は置き場所を見直す一つの区切りにもなります。

優遇期間が終わった後の置き場所や運用の進め方を具体的に考えたい場合は、退職金を受け取った後の運用相談はどこへで相談先ごとの手数料の出方を確認しておくと、申込み時点から方向性を決めやすくなります。

まとめ:4つの数字を確認してから、申し込むかどうかを判断する

退職金専用の定期預金は、表示されている年利の数字だけでは、実際に受け取る金額を判断できない商品です。ここまで見てきた4つの数字、優遇金利が続く期間と対象になる金額の上限、利息から差し引かれる税金、投資信託や保険がセットになっている場合のコスト、預金保険で守られる範囲を、案内書面と照らし合わせて自分で確認することが、この商品との向き合い方そのものになります。

年利の高さは案内する側が最も見せたい数字であり、期間や上限、税金、セット条件のコストは、自分で書面を読み込まなければ見えてこない数字です。この4つを確認し終えるまでその場で結論を出さない、という姿勢を持てるかどうかが、優遇金利プランを有利に使えるかどうかの分かれ目になります。

確認した結果、条件が自分の状況に合っていると判断できれば申し込めばよく、数字が見えない部分が残っていたり、セット条件のコストが優遇金利の増分を上回ると感じたりした場合は、いったん保留にして書面を持ち帰る選択肢も実在します。申し込むかどうかの結論を急ぐ必要はなく、4つの数字を確認したうえで、自分のペースで決めることができます。

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