自分の退職金はいくらもらえるのか|平均額より先に確認する4つの手段と見落としやすい点

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退職金はいくらもらえるのか。検索すると、平均額を示す統計データがすぐに見つかります。ですが、その数字を自分の老後資金の前提に置くのは早計です。平均額の統計は、企業の規模や学歴、退職理由といった条件で区分されたものであり、あなた自身の勤務先の制度とは無関係だからです。

経営の現場で人を雇う側にいた経験から言うと、退職金がいくら出るかは、会社の規程を見なければ誰にもわかりません。しかも退職金制度には、退職一時金、中小企業退職金共済(中退共)、企業型確定拠出年金(企業型DC)、確定給付企業年金(DB)といった複数の型があり、型によって金額の決まり方も、確認できる窓口も変わります。

この記事では、平均額の統計に頼らず、自分の退職金額を確認するための具体的な手段と、金額が変わる要因、転職経験がある人が見落としやすい点を整理していきます。

この記事の要点

  • 自社の退職金制度がどの型か、まず確認する
  • 確認手段は4つ、確実性の高い順に試すのが確実
  • 転職経験者は前職分の未請求・未移換に注意

退職金制度には複数の型がある(退職一時金/中退共/企業型DC/DB)

平均額の統計から離れて自分の金額を追うとき、まず確認すべきは「自社の退職金制度がどの型か」です。型によって金額の決まり方も、確認できる窓口も異なります。

代表的な型は次の4つです。

金額の決まり方 主な確認先
退職一時金 勤続年数・退職理由に応じて社内規程で算定 就業規則・退職金規程
中小企業退職金共済(中退共) 毎月の納付額と加入期間に応じて機構が算定 中退共(独立行政法人 勤労者退職金共済機構)
企業型確定拠出年金(企業型DC) 積立額を自分で運用し、結果次第で変動 記録関連運営管理機関
確定給付企業年金(DB) 規約であらかじめ定めた計算式で確定 企業年金連合会(離転職時の移換・未請求分の照会含む)

退職一時金については、労働基準法第89条で退職手当の定めが就業規則の記載事項とされているため、社内規程を確認すれば計算方法にたどり着けます。一方、企業型DCは自分の運用結果によって受取額が変わるため、現時点の残高を記録関連運営管理機関で確認しない限り、いくら受け取れるかは確定しません。

自社がどの型を採用しているかがそもそも分からない場合は、次の章で挙げる4つの手段のうち、まず人事・総務への照会から始めるのが確実です。

自分の退職金額を確認する4つの手段(確実性の高い順)

自社の退職金制度がどの型かを踏まえたうえで、次にすべきは自分の金額そのものを確認する作業です。確認先は複数ありますが、確実性には差があります。

手段 確認できる内容 確実性
就業規則・退職金規程の閲覧 支給要件・算定方法そのもの
人事・総務への見込額の照会 現時点の勤続年数に基づく試算額
制度別の記録の確認(中退共の加入状況、企業型DCの残高、企業年金の通知) 各制度が管理する現時点の金額 中〜高
給与明細・年次の通知類 制度によっては積立額や運用状況の断片

最も確実なのは、就業規則・退職金規程そのものを見ることです。労働基準法第89条により、退職手当の定めがある場合は支給要件や算定方法などを就業規則に記載することが求められているため、規程を確認すれば算定の仕組みそのものにたどり着けます。

規程を読んでも算定結果が分からない場合は、人事・総務に見込額の試算を依頼するのが次善の手段です。中退共に加入している場合は機構への加入状況照会、企業型DCの場合は記録関連運営管理機関の窓口やサイトで残高を確認できます。確定給付企業年金(DB)は、企業年金連合会が移換・未請求分の照会窓口となっている場合があります。

どの手段も、平均額の統計より個別性の高い情報です。次の章では、この金額自体が変動する要因を確認します。

金額が動く要因(勤続年数・退職理由・企業型DCの運用結果)

制度の型と確認手段が分かっても、実際に受け取れる金額は複数の要因で変動します。まず勤続年数です。退職一時金は多くの企業で勤続年数に応じて算定されるため、規程に定められた年数の数え方(入社日の起点、休職期間の扱いなど)を就業規則で確認する必要があります。

退職理由と企業型DCの違い

次に退職理由です。定年退職、自己都合退職、会社都合退職、早期退職優遇制度の利用など、退職理由の区分によって支給率や加算の有無が異なる規程を置く企業があります。自分がどの区分に当てはまるかは、規程の該当条文を確認しなければ分かりません。

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、他の型と異なり金額そのものが確定していません。積立金をどの商品で運用してきたかによって残高が変動するため、退職時点の受取額は記録関連運営管理機関で最新の残高を確認するまで分からない、という点が退職一時金・中退共・確定給付企業年金(DB)との大きな違いです。

勤続年数、退職理由、運用結果のいずれも、平均額の統計だけでは把握できません。次の章では、転職経験がある人が見落としやすい点を確認します。

転職経験がある人が見落としやすい点(前職分の未請求・未移換)

確認すべき退職金は、現在の勤務先の分だけではありません。転職経験がある場合、前職で加入していた制度の資産が、請求や移換の手続きをしないまま前職側に残っている可能性があります。

制度ごとの資産の残り方

制度によって残り方が異なります。企業型確定拠出年金(企業型DC)は、加入者資格を喪失してから6か月以内に移換または脱退一時金の請求手続きをしなければ、資産が国民年金基金連合会へ自動的に移換されます。自動移換されると運用が行われないまま管理手数料だけが資産から差し引かれ続けるうえ、自動移換されている期間は老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間にも算入されません。

中小企業退職金共済(中退共)は加入者本人からの請求がなければ支給されない仕組みのため、前職の退職時に請求していなければ、退職金が中退共に残ったままになっている可能性があります。確定給付企業年金(DB)についても、企業年金連合会が移換・照会の窓口となっている場合があるため、前職の制度が分からない場合はまず問い合わせて確認する必要があります。

複数回の転職を経てきた人ほど、確認すべき窓口の数も増えます。心当たりがある場合は、現職の記録だけでなく、前職時点で加入していた制度の名称を思い出すところから始めるのが確実です。

金額を把握した後に決める順番

受取方法 → 税 → 預け先 → 相談先

自社の制度の型と、自分の見込額が確認できたら、次に考えるべきは受け取り方です。退職金は制度によって、一時金としてまとめて受け取るか、企業年金として分割で受け取るかを選べる場合があります。受け取り方によって課税の扱いが変わり、一時金で受け取る場合は退職所得として、年金として受け取る場合は雑所得として扱われる区分があることが、国税庁タックスアンサーで示されています。

受取方法の次に検討すること

ここで税の詳細な計算式まで踏み込むと、金額の確認という本題から外れてしまいます。受取方法ごとの税の判断軸は、別記事「退職金は一時金と年金、どちらで受け取るべきか」で扱っているため、そちらで確認してください。

受取方法の見通しが立ったあとに検討するのが、預け先です。そのまま置いておくか、運用に回すかは、受け取る金額と時期が確定していなければ具体的な検討に入れません。そして最後に、誰に相談するかという判断が来ます。

金額・受取方法・預け先の順で前提が固まっていない段階で相談先を決めてしまうと、前提が変わるたびに話が振り出しに戻ります。まず自分の金額を確定させることが、この一連の判断の出発点になります。

受け取る前の段階で整理しておきたい相談事項は、別記事「退職金を受け取る前に相談しておきたい5つのこと」でまとめています。

まとめ ─ 自分で確認する順番のチェックリスト

ここまで見てきた確認事項は、思いついた順ではなく、確認する順番があります。最後に、自分の状況へ当てはめるためのチェックリストとして整理します。

順番 確認すること
1 自社の退職金制度がどの型か(退職一時金・中退共・企業型DC・DB)
2 型に応じた確認手段で、現時点の見込額を把握したか
3 勤続年数・退職理由・(企業型DCなら)運用結果を踏まえた金額になっているか
4 転職経験がある場合、前職分の未請求・未移換が残っていないか
5 金額を把握したうえで、受取方法 → 税 → 預け先 → 相談先の順で検討する準備ができているか

この5つは、上から順に前提が積み上がる形になっています。1と2が曖昧なままでは、3以降を検討する土台がありません。

老後資金の前提は、退職金だけではありません。公的年金がいくら入るかも合わせて確認しておく必要があり、ねんきん定期便から金額を把握する手順は別記事「年金は結局いくらもらえるのか」で整理しています。

途中で「自分では判断できない」と感じた段階があれば、そこが相談先を探す起点になります。相談先には銀行・証券会社・保険会社・FPなど複数の類型があり、得意分野や報酬の仕組みが異なるため、相談先の選び方で類型ごとの違いを先に確認しておくと、同じ疑問を何度も繰り返さずに済みます。

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