旧NISAの非課税期間が終わったらどうなるか|50代の課税口座移管と売却の判断材料

お金の相談

旧NISA(一般NISAやつみたてNISA)で投資信託や株式を保有している方の中には、証券会社から「非課税期間終了のお知らせ」が届いて、初めて期限の存在に気づいたという方もいるのではないでしょうか。2024年に新NISAが始まったこともあり、「自分の旧NISA口座はどうなるのか」を確認しないまま期限が近づいているケースは少なくありません。

結論から言うと、非課税期間が終わっても、資産そのものが消えるわけではありません。ただし、期限までに売却しなければ、保有している投資信託や株式は自動的に課税口座(特定口座・一般口座)へ払い出されます。このとき、払い出し時点の時価が新たな取得価額として付け替えられるため、含み損を抱えたまま移すと、その後の値上がり益に対して余分に税金がかかる場合があります。

また、「新NISAへロールオーバーすれば非課税のまま続けられるのでは」と考える方もいますが、この移し替えは制度上できません。

この記事では、非課税期間が終わった瞬間に何が自動で起きるのか、課税口座へ移った後の税金の仕組み、そして期限までに取れる3つの選択肢を整理します。取り崩し時期が視野に入ってくる50代にとって、これは退職金や年金と並ぶ、期限のあるお金の判断です。

旧NISAの非課税期間が終わると何が起きるのか

旧NISA(一般NISAやつみたてNISA)は、2023年末で新規の買付が終了し、2024年からは新しい制度である新NISAへ移行しています(金融庁 NISA特設ウェブサイト)。すでに旧NISA口座で保有している投資信託や株式については、新規に買い付けることこそできなくなったものの、それぞれの非課税期間が終わるまでは、そのまま非課税での保有を続けられます。

問題は、この非課税期間が終わったときに何が起きるかです。結論から言うと、非課税期間の終了までに売却していない場合、保有している投資信託や株式は自動的に課税口座(特定口座または一般口座)へ払い出されます(金融庁 NISA特設ウェブサイト)。

資産そのものが没収されたり消えたりするわけではありませんが、非課税というメリットはそこで終わり、以降に生じる値上がり益や配当・分配金には、通常どおり税金がかかるようになります。

この払い出しは、金融機関側の手続きとして自動的に行われます。保有者が何か特別な申請をしなくても、期限が来れば口座区分は切り替わります。逆に言えば、「何もしなければ課税口座へ移る」という前提を知らないまま期限を迎えてしまうと、その前に検討できたはずの選択肢を比較する機会そのものを逃すことになります。

新NISAへのロールオーバーはできない

ここで、多くの方が一度は考える誤解に触れておきます。「非課税期間が終わっても、新NISAへ移し替え(ロールオーバー)すれば、非課税のまま保有を続けられるのではないか」という考え方です。

かつての旧NISA制度には、非課税期間が終わる資産を翌年の非課税枠へ移すロールオーバーという仕組みがありました。しかし、この仕組みは新NISAには引き継がれていません。旧NISAで保有している資産を、そのまま新NISAの非課税枠へ移すことは制度上できません(金融庁 NISA特設ウェブサイト)。

新NISAは旧NISAとは別枠の制度として設けられており、両者の資産を制度上つなぐ手続きは存在しません。非課税期間が終わった旧NISAの資産について、非課税での保有を続けたい場合に取れる方法は、期限までに一度売却し、その資金で新NISAの投資枠を使って買い直すことだけです。

この売却は非課税期間中に行うため、その時点の利益に税金はかかりませんが、買い直せる金額は新NISAの年間投資枠の範囲内に限られます。

つまり、「制度が自動でつないでくれる」という前提は成り立ちません。非課税での保有を続けたいなら、期限が来るのを待つのではなく、期限までに自分で売却と買い直しを実行する必要があります。

課税口座へ払い出されるときの「取得価額の付け替え」の仕組み

非課税期間が終わり、資産が課税口座へ払い出されるとき、税金の計算上、見落とされやすい仕組みがあります。それが「取得価額の付け替え」です。

通常、投資信託や株式を売却したときの利益は、買ったときの価格(取得価額)と売ったときの価格の差で計算されます。ところが、旧NISAから課税口座へ払い出される資産については、もともと自分が買ったときの価格ではなく、払い出された時点の時価が新たな取得価額として扱われます(SBI証券・楽天証券・りそな銀行・SMBC日興証券等の金融機関公式案内)。

この付け替えは、含み損と含み益のどちらを抱えているかで、その後の税負担に違う影響を与えます。含み益が出ている状態で払い出された場合、非課税期間中に増えた分の利益には課税されないまま、時価が新しい取得価額になります。一方、含み損を抱えたまま払い出された場合は、その損失は税務上ないものとして扱われます。

払い出し後に基準価額が回復しても、回復した分がそのまま課税対象の利益として扱われる形になり、実質的に損失分を取り戻すまでの値上がりにも税金がかかる計算になります。

さらに、旧NISA口座で生じた譲渡損失そのものについても注意が必要です。課税口座であれば、株式や投資信託の売却損は他の利益と相殺(損益通算)したり、翌年以降に繰り越して控除したりできます。しかし、NISA口座内で生じた譲渡損失は、この損益通算・繰越控除の対象外とされています(国税庁タックスアンサー)。

非課税期間中に値下がりしたまま売却しても、その損失を税金の計算に使うことはできません。

払い出し時の状態 付け替え後の取得価額 その後の税負担への影響
含み益がある 払い出し時点の時価(高い価格) 非課税期間中の値上がり分は非課税のまま確定
含み損がある 払い出し時点の時価(低い価格) 損失は損益通算・繰越控除の対象外。その後の回復分に課税される

期限が近づいた資産に含み損が出ている場合、そのまま課税口座へ移すか、期限内に売却しておくかで、将来の税負担が変わる可能性があるということです。

一般NISA・つみたてNISAの非課税期間はいつ終わるか

非課税期間そのものの長さは、一般NISAとつみたてNISAで異なります。一般NISAの非課税期間は5年、つみたてNISAの非課税期間は20年です(金融庁 NISA特設ウェブサイト)。

つみたてNISAは非課税期間が20年と長いため、多くの方にとって期限はまだ先の出来事に感じられるかもしれません。一方、一般NISAは非課税期間が5年と短く、2018年以降に毎年買い付けた分がそれぞれ5年ごとに期限を迎える仕組みだったため、すでに複数回にわたって払い出しを経験している方も、これから期限を迎える方もいます。

どちらの制度も、非課税期間の起点は「買い付けた年」です。同じ年に一括で買い付けたのではなく、複数年にわたって積み立てたり買い増したりしていた場合、購入した年ごとに非課税期間の終わる時期がずれます。そのため、自分の保有資産がいつ非課税期間を終えるのかは、一律の年数だけでなく、実際に買い付けた年を金融機関の取引履歴で確認する必要があります。

なお、購入年ごとの非課税期間終了年を一覧にして示すことも考えられますが、金融機関によって表示の仕方や案内のタイミングが異なるため、本記事では原則の年数(一般NISA5年・つみたてNISA20年)を伝えるにとどめます。自分の保有資産がいつ払い出しの対象になるかは、取引先の金融機関の口座情報や案内で確認してください。

期限までに取れる3つの選択肢

ここまでの内容を踏まえると、非課税期間が終わるまでに取れる選択肢は、大きく3つに整理できます。

選択肢 内容 確認しておきたい点
① 期間内に売却して現金化する 非課税期間中に売却し、利益・元本を現金として受け取る 非課税期間中の売却のため、その時点の利益には課税されない
② 期間内に売却し、新NISAの枠で買い直す 非課税期間中に売却し、その資金を新NISAの投資枠で買い直す 買い直せる金額は新NISAの年間投資枠の範囲内に限られる。売却から買い直しまでの間、相場が変動する
③ 何もせず、課税口座で保有を続ける 期限までに売却せず、非課税期間の終了を迎えて課税口座へ移す 払い出し時の時価が新たな取得価額になる。含み損を抱えたまま移すと、その後の値上がり分に課税される場合がある

①と②はどちらも期限内に売却する点で共通していますが、②はさらに新NISAの投資枠を使って買い直す一手間が加わります。③は何も手続きをしない選択肢ですが、「手続きをしない」こと自体が、取得価額の付け替えという結果を引き受けることを意味します。

②の新NISAでの買い直しを検討する場合、新NISAをこれから始める・買い直す場合の考え方も判断材料になります。次の章では、この3つのうちどれが向くかを分ける観点を整理します。

どの選択肢が向くかを分ける4つの観点

前の章で整理した3つの選択肢のうち、どれが自分に向いているかは、次の4つの観点から考えると絞り込みやすくなります。

1つ目は、取り崩し予定時期です。老後資金として近い将来に取り崩す予定があるなら、非課税期間中に売却して現金化する選択肢を優先しやすくなります。逆に、取り崩しまでまだ時間があるなら、新NISAで買い直して非課税での保有を続ける選択肢も検討の余地が出てきます。

2つ目は、含み損益の状態です。含み益が出ている場合、非課税期間中に売却すればその利益には課税されませんが、含み損を抱えたまま課税口座へ移すと、前の章で触れた取得価額の付け替えにより、その後の値上がり分に課税される可能性があります。含み損がある場合は、期限内に売却して損失を確定させておくかどうかも判断材料になります。

3つ目は、新NISAの生涯投資枠の残りです。売却して新NISAで買い直す場合、買い直せる金額は自分の投資枠のうち空いている部分に限られます。すでに枠の多くを使っている場合、旧NISAの資産をすべて買い直せるとは限りません。

4つ目は、保有している商品を今後も持ち続けたいかどうかです。今の商品構成に納得しているなら、課税口座での保有継続や同じ商品での買い直しが選びやすくなります。見直したいと感じているなら、売却を機に商品を入れ替える判断もあり得ます。

これら4つの観点は単独で決め手になるものではなく、組み合わせて考える必要があります。

自分で判断しきれないときの相談先の見極め方

ここまでの4つの観点を組み合わせても、自分の資産額や家計全体とのバランス、含み損益の正確な金額、新NISAの投資枠の残りまでを一人で突き合わせて判断するのは、簡単ではない場合があります。特に複数年にわたって買い付けてきた場合、非課税期間の終了時期も含み損益も購入年ごとに異なり、取引履歴を一つずつ確認しないと全体像がつかみにくくなります。

判断に迷う場合、無理に一人で結論を出そうとせず、外部の相談先を判断材料の一つとして使うという考え方もあります。ただし、相談先であればどこでもよいわけではありません。相談する相手によって、提案される内容の傾向や、報酬・手数料の仕組みが異なるためです。

参照先 扱っている内容
新NISA・iDeCoは誰に相談すべきか 旧NISA・新NISAの制度を踏まえたうえで、どのような相談先が自分に向いているかの見極め方
50代のお金の相談先はどこがいい? 相談先を収益構造で見る4類型と、それぞれの向き不向きの比較

相談先を選ぶ際は、旧NISAの制度をどこまで理解しているかだけでなく、相談相手がどのような仕組みで報酬を得ているかも合わせて確認しておくと、提案内容を受け取ったときの判断材料が増えます。

まとめ

旧NISAの非課税期間が終わっても、資産そのものがなくなるわけではありません。ただし、期限までに売却しなければ、保有している投資信託や株式は自動的に課税口座へ払い出され、そこで非課税というメリットは終わります。新NISAへのロールオーバーは制度上できないため、非課税での保有を続けたいなら、期限までに自分で売却し、新NISAの投資枠で買い直す必要があります。

払い出しの際は、その時点の時価が新たな取得価額として付け替えられます。含み損を抱えたまま移すと、その後の値上がり分に課税される可能性がある一方、NISA口座内で生じた損失は損益通算・繰越控除の対象にもなりません。この仕組みを知らずに期限を迎えると、選べたはずの選択肢を比較する機会そのものを失うことになります。

やるべきことは、まず自分が保有している旧NISA資産の非課税期間がいつ終わるのかを、取引先の金融機関の口座情報で確認することです。そのうえで、期間内に売却して現金化するか、売却して新NISAの枠で買い直すか、何もせず課税口座での保有に移るかを、取り崩し予定時期や含み損益の状態などの観点から検討してください。

判断がつかない場合は、期限を迎えるまでの間に、相談先の見極め方を材料の一つとして使うことも選択肢になります。

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