50代夫婦の老後資金はいくら必要か|世帯の年金・支出とひとりになった後まで含める試算手順

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「夫婦の老後資金はいくら必要か」と検索すると、「夫婦で2,000万円」「毎月◯万円不足」といった平均額の記事が多く見つかります。ですが、その数字がそのまま自分たちに当てはまるとは限りません。

この記事で確認する4つの手順

  • 手順1:夫婦2人分の年金を時系列に並べる
  • 手順2:2人で暮らす期間の支出を出す
  • 手順3:ひとりになった後の期間を試算に入れる
  • 手順4:不足額を合計し、夫婦で数字を揃える

夫婦それぞれの年金の見込額や受給開始年齢は異なりますし、日々の支出の内訳も世帯ごとに差があるからです。さらに、平均額の記事の多くが触れていないのが、夫婦のどちらか一方が先に亡くなった後の「ひとりになった後の期間」です。この期間、年金収入は大きく減る一方で、生活費は単純に半分にはなりません。試算に入れていないと、数字は思っていたより早く不足に転じます。

この記事では、平均額をいったん脇に置き、上記4つの手順で、自分たちの世帯としての老後資金を考えるための材料を整理します。

「夫婦の老後資金はいくら必要か」に平均額では答えられない理由

総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」では、高齢夫婦無職世帯の実収入・消費支出・不足額が公表されています。ただしこれは全国平均から算出した参考値で、年度によって数値が変わります。自分たちの世帯の年金額や支出がこの平均とどれだけ違うかまでは示してくれません。

夫婦それぞれの年金は、加入していた年数や働き方によって金額も受給開始年齢も異なります。支出も、住居費や医療費の水準は世帯ごとに差が大きく、平均値をそのまま当てはめると実態とずれます。

さらに、夫婦のどちらかが先に亡くなった後の「ひとりで暮らす期間」は、平均額の記事の多くで試算に含まれていません。この期間を含めるかどうかで、必要な老後資金の見積もりは大きく変わります

平均額は出発点として参考にしつつ、この4つの手順で自分たちの世帯の数字に置き換えていきます。

手順1:夫婦2人分の年金を時系列に並べる

世帯の老後資金を試算する最初の作業は、夫婦それぞれの年金を「いつから・いくら」受け取れるのかを確認することです。老齢年金の受給開始年齢は60歳から75歳の範囲で選べます。夫と妻で受給開始年齢が同じとは限らないため、まず一人ずつ確認します。

確認する手段は、毎年届く「ねんきん定期便」と、オンラインで確認できる「ねんきんネット」です。ねんきん定期便・ねんきんネットでは、これまでの加入記録や年金見込額など、年金額を試算するための項目を確認できます。夫婦それぞれ自分の分を確認する必要があり、配偶者の分を代わりに見ることはできません。

確認した数字は、年ごとの表にして時系列に並べます。夫の受給開始年齢、妻の受給開始年齢、それぞれの見込額を並べると、「夫だけ受給している期間」「妻だけ受給している期間」「二人とも受給している期間」が見えてきます。この期間ごとの重なりが、次の手順で支出と突き合わせる土台になります。

ねんきん定期便・ねんきんネットの項目ごとの読み方を個人単位で詳しく確認したい場合は、ねんきん定期便の見方で整理しています。

手順2:「2人で暮らす期間」の支出を出す

手順1で夫婦の年金を時系列に並べたら、次は支出側です。総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」では、高齢夫婦無職世帯の消費支出が費目別に公表されています。住居費・食費・水道光熱費・保健医療費・交通通信費・保険料といった項目ごとの内訳が分かります。

ただしこれは全国の平均から出した参考値で、年度によって数値が変わります。そのまま自分たちの必要額として使うと、実際の生活とずれることがあります

自分たちの数字に置き換える手順は次の通りです。

  • 家計調査年報の費目一覧を確認し、自分たちの家計と対応する項目を洗い出す
  • 直近1年の実際の支出を、通帳やクレジットカードの明細から費目ごとに集計する
  • 平均値と自分たちの実額を並べ、大きく外れている項目(住居費・保険料に多い)を確認する
  • 住宅ローンの完済時期や保険の見直し予定など、今後変わる予定がある費目は将来の値に置き換える

手順2で出す数字

  • 2人で暮らす期間の、月あたりの支出額(自分たちの実額ベース)

費目の分解をより細かく見たい場合は、老後の不安を5つの費目に分解するで整理しています。ここで出した支出額は、次の手順で「ひとりになった後」の支出と比較する基準になります。

「2人期間」と「ひとり期間」で収支が変わる項目

夫婦のどちらか一方が亡くなると、世帯の年金収入は大きく減ります。一方で、生活費のすべてが同じ割合で減るわけではありません。項目ごとに減り方が違うため、ひとつずつ確認しておく必要があります。

年金は、亡くなった側の受給分がなくなる一方、遺族厚生年金などで一部が補われる場合があります。それでも世帯全体の年金収入は、2人期間より少なくなるのが一般的です。

食費や水道光熱費は、単純に半分にはなりません。総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」では高齢単身無職世帯の消費支出も費目別に公表されており、高齢夫婦無職世帯の数値と見比べると、1人あたりの負担がむしろ増える費目があることが分かります。基本料金など、人数に関わらずかかる固定費が含まれるためです。

住居費や保険料は、契約内容によって変わり方が分かれます。住宅ローンを完済済みなら住居費への影響は小さく、賃貸なら金額は変わりません。保険料も、亡くなった側の契約分はなくなりますが、残る側の医療保険や介護保険の保険料は続きます。

医療費・介護費は、年齢が上がるほど増える傾向があります。ただし公的介護保険には自己負担割合の仕組みがあり、高額療養費制度にも自己負担限度額の仕組みがあるため、負担が際限なく増え続けるわけではありません。制度の範囲を確認したうえで見積もる必要があります。

項目 2人期間からの変化
年金収入 一方の受給分がなくなり、世帯全体では減る
食費・水道光熱費 半分にはならず、1人あたりは増えることがある
住居費 契約状況次第。完済済み・賃貸なら変化は小さい
保険料 亡くなった側の分はなくなるが、残る側の分は続く
医療・介護費 年齢とともに増える傾向。自己負担割合や限度額の仕組みがある

この一覧は、次の手順でひとりになった後の収支を試算するときの確認材料になります。

手順3:ひとりになった後の期間を試算に入れる

この「ひとりになった後の期間」を試算に入れないと、数字は実際より甘く出ます。前の一覧で見た通り、年金収入は減っても生活費は半分にはならないためです。

まず確認するのは遺族厚生年金です。亡くなった配偶者が厚生年金に加入していた場合、一定の要件を満たすと遺族厚生年金を受け取れます。受給要件や年金額の考え方は日本年金機構が公開していますが、2025年の年金制度改正により段階的に見直しが進んでいます。内容は確認日時点のものとして幅を持たせて確認してください。

試算に組み込む手順は次の通りです。

  • 夫婦のどちらが先に亡くなる想定かで2パターン(夫が先/妻が先)を用意する
  • 各パターンで、残る側の老齢年金と遺族厚生年金を合算した年金収入を出す
  • 手順2の「2人期間」の支出額を基準に、前の一覧の変化方向で項目ごとに増減させ「ひとり期間」の支出額を出す(保険料は亡くなった側の契約分を差し引き、食費・光熱費・医療介護費は1人あたり増分を上乗せ、住居費は契約状況に応じて調整)
  • 年金収入と支出額を突き合わせ、ひとり期間の月あたり不足額を確認する

単身世帯としての老後資金の考え方をさらに詳しく確認したい場合は、50代独身の老後資金はいくら必要かで整理しています。

手順4:不足額を合計し、夫婦で数字を揃える

手順1〜3で出した年金・2人期間の支出・ひとり期間の収支を、時期ごとに突き合わせます。3つの手順はそれぞれ別々に出した数字なので、最後に一本の時系列表へまとめる作業が必要です

まとめ方は次の通りです。

  • 手順1の年金の時系列と、手順2・手順3で出した支出額を、同じ年ごとの行に並べる
  • 各年で「年金収入 − 支出額」を計算し、不足する年と余る年を確認する
  • 2人期間とひとり期間、それぞれで不足額が続く年数を確認する
  • 不足額が大きい年、続く期間が長い年を洗い出す

この作業は夫婦一人だけで進めず、一緒に確認してください。年金の見込額の確認方法や、支出のどの項目を残すかは、夫婦それぞれの感覚で判断が分かれやすいところです。同じ表を見ながら合意しておくと、後で認識のずれに気づくことを避けやすくなります。

補足:世帯収入を変える要因を確認する(年齢差のある夫婦の場合)

手順1で夫婦の年金を時系列に並べる際、年齢差のある夫婦はもう一つ確認しておきたい項目があります。年金額がここまでの試算より上乗せされる期間があるためです。

  • 老齢厚生年金を受け取る側に、要件を満たす年下の配偶者がいる期間:加給年金が上乗せされる(本人の年金への加算)
  • 配偶者自身が受給開始年齢になると、加給年金は終了し、一部が振替加算として配偶者の年金に切り替わる

つくかどうか、金額がいくらになるかは加入期間や生年月日によって条件が分かれ、すべての夫婦に当てはまるわけではありません。対象になりそうな場合は要件を個別に確認してください。

要件と金額の考え方は、年下の配偶者がいると年金は増えるのかで整理しています。

ここまでの手順で出るのは、あくまで自分たちの前提に基づいた数字です。年金の見込額や年齢差による受給時期のずれは、世帯ごとに条件が違います。

年金・貯蓄の無料相談(ガーデン)は、夫婦それぞれの年金と老後資金の見通しを無料で相談できる窓口です。ねんきん定期便を2人分そろえた状態で臨むと、この記事で出した数字を突き合わせられます。面談は1時間程度、未成年・学生・無職の方は対象外です。

まとめ

この記事では、夫婦の老後資金を平均額ではなく、次の4段階の手順で試算してきました。

  • 手順1:夫婦2人分の年金を時系列に並べる
  • 手順2:2人で暮らす期間の支出を出す
  • 手順3:ひとりになった後の期間を試算に入れる
  • 手順4:不足額を合計し、夫婦で数字を揃える

多くの平均額の記事が触れていないのが手順3の「ひとりになった後の期間」です。この期間を試算に含めるかどうかで、必要な老後資金の見積もりは大きく変わります

4段階の手順を進めても、年金の見込額の確認や遺族厚生年金の試算は条件が細かく分かれ、自分たちだけでは数字が固まらないことがあります。そのときは、ここまで整理した年金の時系列表・支出の内訳・不足額の推移を資料として、第三者に相談する選択肢もあります。

相談先にはいくつかの種類があり、それぞれ収益の仕組みや向いている相談内容が異なります。50代のお金の相談先はどこがいい?収益構造で見る4類型と選び方で、相談先ごとの違いを整理しています。

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