退職金の運用でよくある失敗は何か|50代が商品を契約する前に確認する5つの型

お金の相談

退職金の運用でよくある失敗、5つの型

  • 型1:生活資金と分けないまま、受け取り直後に一括で投じる
  • 型2:仕組みが複雑な商品を、説明を受けたその場で決めてしまう
  • 型3:手数料が発生する場所を分解せず、「利回り」だけで比べる
  • 型4:毎月受け取れる形を「利息が増えている」と誤解する
  • 型5:優遇金利・キャンペーン期間が終わった後の置き場所を決めていない

退職金の運用で失敗したという話の多くは、実は商品選びそのものではなく、決め方でつまずいています。退職金が振り込まれた直後は、金融機関から運用商品の案内が集中しやすい時期でもあり、優遇金利や期間限定といった言葉で、その場での判断を求められがちです。

この記事では、上記5つの型を、公的機関が公表している資料をもとに1つずつ確認していきます。どれも、契約書を持ち帰って確認すれば防げる失敗です。

特定の商品をすすめる記事ではありません。いま提示されている商品を契約するかどうかを、自分の言葉で判断するための確認手順を渡します。

退職金の運用でよくある失敗、まず5つの型を一覧で確認

退職金の運用でつまずくケースには、共通するパターンがあります。上記の5つの型を、ここから1つずつ確認していきます。

金融庁は「顧客本位の業務運営に関する原則」で、金融事業者が顧客の最善の利益を考慮した提案・情報提供を行うことを求めています。ただし提案を受け取る側にも、その場で契約するかどうかを判断する基準が必要です。

まだ相談先を決めていない場合は、退職金2000万円、銀行に相談する前に整理すべきことで相談前の自己整理から確認しておくと、次の5つの型もより具体的に読めます。

型1:生活資金と分けないまま、受け取り直後に一括で投じる

退職金が振り込まれた直後は、口座の残高が普段よりまとまった金額に見えます。ここで、当面の生活費や近い将来に使う予定のある支出を別に確保しないまま、全額を一つの商品に投じてしまうケースがあります。

一度に大きな金額を動かすと、相場が下がった局面で解約する必要が生じたときに、元本を割り込んだ状態で取り崩すことになりかねません。生活費が足りなくなったタイミングと、値下がりしたタイミングが重なる事態は避けたいところです。

契約前に紙の上で確認したいのは、次の1点です。

契約前の確認項目

  • 生活防衛資金と、数年以内に使う予定のある支出を、運用に回す前に別勘定へ分けたか

この切り分けができていれば、相場の動きに関わらず日々の生活が揺らぐことはありません。分け終えたうえで、どこまでリスクを取るかを考える段階に進めます。取り崩しまでの年数から配分を決める考え方は、50代の資産運用はどこまでリスクを取れるかで確認できます。

型2:仕組みが複雑な商品を、説明を受けたその場で決めてしまう

退職金の運用商品には、外貨建て保険・変額保険・仕組債のように、仕組みが複雑なものがあります。窓口で専門的な言葉を並べて説明を受けると、理解しきれないままその場で契約してしまうケースが見られます。

日本証券業協会は、仕組債など複雑な商品の販売にあたって、顧客がリスクを理解できているかを確認する必要があるという考え方を示しています。理解が追いつかないまま契約が進む状態は、本来避けたい場面です。

独立行政法人国民生活センターにも、高齢者・退職世代からの金融商品トラブルの相談が寄せられています。契約後に「思っていたリスクと違った」と気づくケースは、退職金という取り返しにくい資金ではとくに重くなります。

契約前に確認したいのは、次の1点です。

契約前の確認項目

  • その商品のリスクを自分の言葉で1文にできるか。できなければ、その場で契約せず持ち帰る

「元本割れの可能性がある」という説明を聞けただけでは、自分の言葉にできたことにはなりません。何が起きたら、どれくらい目減りしうるのかを自分の文章で言えるかどうかが基準です。その1文が作れない場合は契約を保留し、書面を持ち帰って読み直す時間を取ります。外貨建て保険で実際に起きているデメリットの具体例は、外貨建て保険のデメリットは何かで確認できます。

型3:手数料が発生する場所を分解せず、「利回り」だけで比べる

案内資料に書かれた「利回り」の数字だけを見て、他の商品と比較してしまうケースがあります。ただし利回りの表示は、費用を差し引く前なのか後なのかが商品によって異なります。まず費用がどこで発生するかを分解して確認する必要があります。

退職金の運用商品でよくある費用の発生場所は、次の4つです。

  • 購入時手数料(申込時に一度だけ発生)
  • 保有中の継続コスト(信託報酬など、保有している間ずっと発生)
  • 解約時の費用(信託財産留保額など、途中で引き出すときに発生)
  • 外貨建て商品の為替の売買レート差(円と外貨を交換するたびに発生)

これらは発生するタイミングも性質も異なります。1つの「利回り」という数字にまとめて比較すると、実際に手元へ残る金額との差が見えなくなります。

金融庁はリスク性金融商品の販売状況について、顧客の運用損益に関する共通KPIを公表しています。費用の見え方が、投資成果の実感と結びつきやすい領域であることがうかがえます。

契約前に確認したいのは、次の1点です。

契約前の確認項目

  • 4つの費用をそれぞれ別の数字として書き出し、合計してから他の商品と比べたか

書き出しておけば、窓口で示された利回りの数字をそのまま受け取らず、自分の手元にいくら残るかで比較できます。相談先ごとの手数料の出方は、退職金を受け取った後の運用相談はどこへで確認できます。

型4:毎月受け取れる形を「利息が増えている」と誤解する

毎月分配型の投資信託などで、定期的にお金が振り込まれる商品があります。この振込を見て、預金の利息のように「増えた分だけ受け取っている」と感じてしまうケースがあります。

投資信託を運用する業界団体は、分配金が運用の収益からだけでなく、元本の一部を取り崩して支払われる場合があることを説明しています。分配金が出ているからといって、資産全体が増えているとは限りません

見分ける手がかりは、契約後に届く「交付運用報告書」や、契約前に受け取る「目論見書」です。基準価額の推移と分配金の内訳を照らし合わせれば、受け取っている分配金がどこから出ているかが分かります。

契約前に確認したいのは、次の1点です。

契約前の確認項目

  • 分配金の原資が運用収益か元本の払い戻しかを、交付運用報告書・目論見書で確認したか

「毎月お金が入る」という仕組みだけで契約を決めず、その中身がどこから出ているかまで確認してから判断します。

型5:優遇金利・キャンペーン期間が終わった後の置き場所を決めていない

退職金専用の定期預金には、当初の数か月だけ金利が優遇されるプランがあります。案内資料の目立つ位置には優遇後の年利が大きく書かれていますが、その金利が何か月続くのか、投資信託などとのセット購入が条件になっていないかは、あわせて確認しておきたい点です。

優遇期間が終わると、金利は通常の水準に戻ります。優遇後の置き場所を決めないまま契約すると、期間終了後に何も考えずそのまま低い金利で資金が据え置かれる状態になりかねません。

契約前に確認したいのは、次の3点です。

契約前の確認項目

  • 優遇金利が適用される期間と、その後の通常金利
  • 優遇の条件に、投資信託などのセット購入が含まれていないか
  • 優遇期間が終わった後、資金をどこに移すかを先に決めているか

預金として置く場合は、預金保険機構の制度で、1つの金融機関ごとに預金者1人あたり元本1,000万円とその利息等までが保護されます。ただし投資信託や保険はこの対象に含まれません。退職金専用定期預金の優遇条件と注意点は、退職金専用の定期預金は本当に得かで確認できます。

運用益にかかる税の基本と、「その場で決めない」を実行する言い方

案内資料に書かれている「利回り」は、税金を引く前の数字であることが多くあります。運用でうまれた利益(値上がり益・分配金・利息など)には、原則として所得税と住民税をあわせて20.315%の税がかかります(申告分離課税)。表示されている利回りが、そのまま手取りになるわけではありません

退職金そのものにかかる税(退職所得控除など)は別の制度です。ここでは深追いせず、運用益への課税だけを区別しておきます。

その場で結論を求められたときに、実際に口に出せる言い方は次の3つです。

その場で決めないための言い方

  • 「一度持ち帰って検討します」
  • 「その内容を書面でいただけますか」
  • 「同じ質問を、別の相談先にもしてみます」

書面をもらえば、後日あらためて手数料や税引き後の見込みを確認する材料になります。同じ質問を複数の相談先にすると、提示される商品や説明の違いが見えてきます。

契約するかどうかの判断に迷ったときは、相談先を収益構造で見分ける記事で、相談先ごとの手数料の出方を確認してから進めます。

まとめ

退職金の運用でつまずく型は、商品の良し悪しよりも「決め方」に表れます。振込直後に案内される商品が、次のどれかに当てはまっていないか、契約前にもう一度見返してください。5つとも、契約書を持ち帰って読み直せば防げる失敗です。

  • 型1:生活防衛資金と分けないまま、受け取り直後に一括で投じていないか
  • 型2:仕組みの複雑な商品を、その場の説明だけで契約していないか
  • 型3:手数料が発生する場所を分解せず、利回りの数字だけで比べていないか
  • 型4:毎月の受け取りを、利息が増えていると混同していないか
  • 型5:優遇金利が終わった後の置き場所を、決めないまま契約していないか

どれか1つでも自分の言葉で説明できない場合は、その場で契約を決める必要はありません。持ち帰って書面を確認し、同じ質問を別の相談先にもぶつけてみてください。提示された条件が、他の相談先でも同じように説明されるかどうかで、その商品が本当に自分に合っているかが見えてきます。

判断に迷うこと自体は失敗ではありません。むしろ、迷わずその場で結論を出してしまうことのほうが、退職金という取り返しにくい資金では大きな失敗につながります。急かされていると感じたときほど、いったん持ち帰る選択を優先してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました