iDeCoの受け取り方は一時金か年金か|50代が退職金と重ねる前に確認する控除と時期

お金の相談

この記事の要点

  • iDeCoの受け取り方は「一時金」「年金」「併用」の3種類
  • 一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除と扱いが異なる
  • 退職金とiDeCoの受取時期が近いと控除の調整に注意が必要

iDeCoは60歳以降、一時金・年金・併用の3つの方法で受け取れますが、どれを選ぶかによって税金の計算方法が大きく変わります。特に注意したいのが、会社の退職金を受け取る時期とiDeCoの一時金を受け取る時期が近い場合です。退職所得控除の枠が単純に二重で使えるわけではない仕組みがあり、知らずに同じ年に受け取ってしまうと、想定外の税負担になることがあります。

この記事では、iDeCoの受給開始年齢の条件、受取方法ごとの税金の仕組み、そして退職金と時期が重なるときに何を確認すればよいかを、公式情報をもとに整理します。まずは自分がどちらの受け取り方に向いているのか、判断材料をつかむところから始めましょう。

iDeCoの受け取り方は3種類、まず結論から整理

iDeCo(個人型確定拠出年金)の受け取り方は、大きく分けて「一時金」「年金」「併用」の3つです。iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)によれば、加入者はこの3つの中から受取方法を選択できるとされています。

一時金は、積み立てた資産をまとめて一括で受け取る方法です。年金は、受け取る期間を区切り、定期的に分割して受け取る方法です。併用は、資産の一部を一時金として受け取り、残りを年金として受け取る組み合わせです。

ここで押さえておきたいのは、選ぶ受取方法によって、税金の計算に使われる制度上の枠組み自体が変わるという点です。一時金でまとめて受け取る場合と、年金として分割して受け取る場合とでは、後述するように適用される控除の種類が異なります。さらに、会社から退職金を受け取る時期が近いと、控除の扱いにも影響が及ぶ場合があります。

つまり「どの受取方法が得か」を単独で判断することはできず、いつから受け取れるのか、退職金といつ重なるのか、という条件と合わせて確認する必要があります。次の章から、受給開始年齢の条件、そして受取方法ごとの税金の仕組みを順に整理していきます。

いつから受け取れるのか(受給開始年齢の条件)

iDeCoは、原則として60歳になるまでは受け取れません。ただし60歳からすぐに受け取れるのは、iDeCoに加入していた期間(通算加入者等期間)が10年以上ある場合に限られます。iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)によれば、通算加入者等期間が短いほど、受給を開始できる年齢は後ろにずれる仕組みになっています。

通算加入者等期間 受給開始年齢
10年以上 60歳
8年以上10年未満 61歳
6年以上8年未満 62歳
4年以上6年未満 63歳
2年以上4年未満 64歳
1年以上2年未満 65歳

50代からiDeCoに加入した場合、この通算加入者等期間が10年に届かないケースがあります。「60歳になればすぐ受け取れる」と思い込まず、自分の加入期間がどの区分に当たるかを、まず確認しておく必要があります。

また、受給を開始する時期は60歳から75歳になるまでの間で、自分で選べます。60歳の時点ですぐに受け取る義務はなく、運用を続けながら受け取り時期を先送りする選択も可能です。なお、60歳以降にiDeCoへ新たに加入した場合は、通算加入者等期間にかかわらず、加入から5年を経過した日から受給できるとされています。

一時金で受け取る場合の税金の仕組み(退職所得控除)

iDeCoを一時金として受け取る場合、税務上は「退職所得」として扱われます。国税庁タックスアンサー(No.1420)によれば、個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金は、退職所得に含まれるとされています。

退職所得には「退職所得控除」という仕組みがあり、控除額は加入期間の長さに応じて計算されます。同資料によれば、加入期間が20年以下の場合は「40万円×加入期間(80万円に満たない場合は80万円)」、20年を超える場合は「800万円+70万円×(加入期間-20年)」という式で計算され、端数の期間は1年に切り上げます。

課税対象になる金額は、受け取った一時金からこの控除額を差し引いたあと、さらに2分の1を掛けた額が基本です。ただし「特定役員退職手当等」に当たる場合はこの2分の1計算が適用されず、「短期退職手当等」に当たる場合も300万円を超える部分には適用されないと定められています。自分の受け取り方がどの区分に当たるかは、受け取る前に確認しておく必要があります。

年金で受け取る場合の税金の仕組み(公的年金等控除)と受取時の費用

iDeCoを年金として受け取る場合、一時金とは異なり「公的年金等」に区分され、雑所得として扱われます。国税庁タックスアンサー(No.1600)によれば、公的年金等に係る雑所得は、その年に受け取った公的年金等の収入金額の合計額から「公的年金等控除」を差し引いて計算するとされています。

ここで押さえておきたいのは、この合算の対象に、老齢基礎年金や老齢厚生年金など、iDeCo以外に受け取っている公的年金等の収入も含まれる点です。iDeCoの年金だけを切り離して控除額を考えることはできず、他の公的年金の受給が始まっている時期には、それらを合計した金額をもとに所得を計算し直す必要があります。

控除額は受給者の年齢や収入水準によって区分が分かれるため、自分の受給状況に当てはめた具体的な金額は、受け取る前に確認しておく必要があります。

あわせて確認しておきたいのが、受取時に発生しうる費用です。iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)によれば、iDeCoの利用には手数料がかかり、その金額は口座を管理する運営管理機関によって異なるとされています。受取時の手数料についても、具体的な金額や発生回数を本記事では断定せず、自分が利用している運営管理機関の条件を事前に確認しておく必要があります。

会社の退職金と受け取る時期が重なるとき、何を確認するか

ここまで、一時金・年金・併用でそれぞれ税金の仕組みが異なることを見てきました。ここで注意したいのが、会社の退職金を受け取る時期と、iDeCoの一時金を受け取る時期が近い場合です。まず3つの受取方法の税務上の扱いと確認点を整理します。

受取方法 税務上の扱い 主な確認点
一時金 退職所得 退職所得控除、他の退職手当等との重複期間の調整
年金 公的年金等(雑所得) 公的年金等控除、他の公的年金との合算、受取ごとの手数料
併用 一時金部分は退職所得、年金部分は公的年金等 両方の枠を踏まえた配分の検討

国税庁タックスアンサー(No.1420)によれば、退職所得控除には、過去に他の退職手当等を受け取っている場合の重複期間を調整する仕組みがあるとされています。つまり、会社の退職金とiDeCoの一時金を、それぞれ別々に全額控除の対象にできるとは限りません。受け取る時期の間隔によって、控除額の扱いが変わる場合があります。

調整の対象になる具体的な年数の条件は制度改正の影響も受けるため、本記事では年数を断定しません。まず退職金は一時金と年金どちらで受け取るべきかを確認し、あわせて自分の退職金はいくらもらえるのかで見込み額と受取時期を把握したうえで、iDeCoの受取時期を同じ年にするかずらすかを検討する必要があります。

自分の受け取り方を仕分ける確認手順

ここまでの内容を、自分の場合に当てはめて確認する手順として整理します。

①②:受給年齢と退職金の予定を確認する

まず①自分の受給開始可能年齢を確認します。前述の通算加入者等期間によって開始できる年齢が変わるため、自分の加入期間がどの区分に当たるかを、iDeCoの運営管理機関や公式サイトで確認しておきます。

次に②会社の退職金の予定額と受取時期を先に確定させます。iDeCoの受取時期だけを単独で決めることはできず、退職金の見込み額と受け取れる時期が分からなければ、控除の重なりを検討する土台が整いません。自分の退職金はいくらもらえるのかで、まず見込み額と時期を把握しておきます。

③④:退職金の方針を固めてiDeCoの配分を決める

続いて③退職金の受取方法(一時金・年金・併用)の考え方を確認します。退職金は一時金と年金どちらで受け取るべきかを参考に、退職金側の方針をある程度固めておくと、iDeCo側の検討が進めやすくなります。

最後に④退職金側の方針を踏まえて、iDeCoを一時金・年金・併用のどちらに寄せるかを検討します。同じ年に重ねるか時期をずらすかは、前章で見た控除の調整の仕組みを踏まえて考える必要があります。

なお、NISAで運用している資産は受取時に課税されない仕組みのため、ここでの確認はiDeCoと退職金の組み合わせに限った話です。iDeCoの受取方針を決めたうえで、NISA側は非課税枠を使う運用を続けるかどうかを別軸で検討する、という前提で使い分けます。50代からNISAをどう位置づけるかは、50代から新NISAを始めるのは遅いかで拠出側の考え方を整理しています。

自力で判断できる範囲と、相談したほうがいい範囲

ここまでの内容のうち、どこまでを自分一人で確認でき、どこからが相談が必要な領域かを整理します。

自力で確認できる範囲は、受給開始できる年齢の条件(自分の通算加入者等期間がどの区分に当たるか)、一時金・年金・併用それぞれに適用される税務上の枠組み、受取時に手数料が発生する仕組みがあることです。これらは公式サイトや自分が利用している運営管理機関への問い合わせで、自分自身が確認できる情報にとどまります。

一方、相談したほうがいい範囲は、会社の退職金とiDeCoの受取時期が近い場合に、退職所得控除の調整を踏まえた具体的な税額の試算を行い、その結果をもとに受け取る時期や、一時金と年金の配分をどう設計するかという判断です。控除額の計算には加入期間・勤続年数・受取時期の間隔など複数の要素が絡み合うため、制度の条件を確認するだけでなく、自分の数字に当てはめて比較する作業が必要になります。

ここは知識の有無より試算の精度が問われる領域であり、自分一人で結論を出すより、専門家に確認したほうが判断のミスを避けやすくなります。

相談先の選び方については、50代のお金の相談先はどこがいい?で、収益構造から見た4類型を整理しています。

まとめ

iDeCoの受け取り方を考えるとき、確認すべき点は大きく3つに整理できます。

  • 1つ目は、受給開始年齢の条件です。60歳になれば必ずすぐ受け取れるわけではなく、通算加入者等期間が10年に満たない場合は、開始できる年齢が段階的に後ろへずれます。50代からiDeCoに加入した人ほど、まず自分の加入期間がどの区分に当たるかを確認しておく必要があります。
  • 2つ目は、受取方法ごとに税金の計算方法がまったく異なる点です。一時金でまとめて受け取る場合は退職所得として退職所得控除の対象になり、年金として分割して受け取る場合は公的年金等として公的年金等控除の対象になります。どちらが得かは条件次第で変わるため、単独では判断できません。
  • 3つ目は、会社の退職金を受け取る時期とiDeCoの一時金を受け取る時期が近いときの注意です。退職所得控除の枠は単純に二重で使えるとは限らず、受け取る時期の間隔によって扱いが変わる仕組みがあります。年数の条件は本記事では断定していないため、自分のケースに当てはまる内容を、受け取る前に確認しておくことが欠かせません。

これら3点は、いずれも自分の加入期間・退職金の見込み額と時期という個別の数字に当てはめて初めて意味を持ちます。まずは条件を一つずつ確認し、判断が難しい部分は相談先を活用する、という順序で進めることをおすすめします。

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