退職後の住民税はいつ、いくら払うのか|50代が退職前に確認する4つの手順

お金の相談

退職した翌年に、住民税の納付書が届いて驚いた、という声をよく聞きます。給与から天引きされていたときは意識しなかった金額が、収入がなくなった年に、まとまった形で請求されるからです。

この記事の結論

  • 住民税は前年の所得に翌年課税される。退職しても、辞めた翌年に納付書が来ることがある
  • 残った住民税は退職月によって扱いが変わる(一括徴収か、自分で納める普通徴収か)
  • 退職金には別枠で住民税がかかる。翌年の納付書に上乗せされるわけではない

住民税は、前年の所得をもとに翌年度に課税される仕組みになっています。だから、退職した年の所得が高ければ、収入が下がった翌年に、その分の税金を自分で払うことになります。さらに、退職金そのものにも住民税がかかりますが、これは翌年の納付書とは別枠で、退職金を受け取る時点で徴収されるものです。この二つを混同すると、退職後に必要な資金の見立てを誤ります。

この記事では、退職前に確認しておきたい4つの手順 ── 今の税額を決定通知書で確認する、退職月による徴収方法の違いを知る、退職金にかかる住民税を分けて考える、翌年の納付スケジュールと資金を準備する ── を、総務省・国税庁などの公式情報をもとに順番に整理します。

なぜ退職の翌年に住民税の納付書が届くのか

会社員として働いている間、住民税は毎月の給与から天引きされます。手続きが自動で進むため、いくら払っているかを意識する機会はほとんどありません。だから退職後にまとまった金額の納付書が届くと、身に覚えのない請求のように感じられます。

住民税は、前年の所得に対して翌年度に課税される仕組みです。所得割と均等割の二つで構成され、いずれも前の年の所得をもとに、翌年度分の金額が決まります。

この仕組みのもとでは、退職して収入がなくなった年であっても、前年に会社員として得ていた所得を基準にした住民税が、翌年度に課税されます。在職中の収入をもとにした税額が、収入の下がった翌年に請求される形になるわけです。

退職の理由が、定年であっても、早期退職であっても、自己都合の転職であっても、この課税の仕組み自体は変わりません。前の年に給与としての所得があった以上、翌年度の住民税は発生します。

つまり納付書が届くのは、税金が新しく発生したからではありません。前の年の所得に対する課税が、時間差をおいてその年の請求として届いているだけです。この「1年遅れ」の仕組みを先に知っておくと、退職後に届く納付書への驚きを減らせます。

驚くのは金額そのものより、「もう会社を辞めているのに、なぜ」というタイミングのずれです。次は、今の自分の税額がいくらなのか、決定通知書で確認する方法を見ていきます。

手順1:今の住民税額を決定通知書で確認する

毎年5〜6月頃、勤務先を通じて「住民税決定通知書(特別徴収税額の決定・変更通知書)」が届きます。給与明細とは別に配られる書類のため、見た記憶がないという人も少なくありません。

この通知書には、年間の住民税額とその内訳が記載されています。総務省によると、個人住民税は所得割と均等割の二つで構成されます。通知書では、主に次の項目を確認できます。

  • 所得割額(前年の所得に応じて計算される部分)
  • 均等割額(所得にかかわらず一定額かかる部分。森林環境税〔年額1,000円〕も均等割とあわせて賦課徴収されます)
  • 年税額(所得割額と均等割額の合計)
  • 特別徴収済額(すでに給与天引きで納めた額)

年税額から、すでに天引きされた額を引けば、退職時点で残っている税額が分かります。この残額をどう納めることになるかは、退職する月によって扱いが変わります。

手順2:退職月で変わる残税額の徴収方法

給与から天引きされる住民税(特別徴収)は、毎年6月から翌年5月までを1年度として計算されています。そのため、年度の途中で退職すると、残っている税額をどう納めるかが、退職する月によって変わります。

1〜4月に退職する場合は、原則として、最後の給与や退職手当から残りの税額がまとめて一括徴収されます。本人の希望とは関係なく、勤務先が源泉徴収の形で処理するのが原則です。

5月に退職する場合は、その月の給与でその年度分の徴収がほぼ完了する時期にあたります。6〜12月に退職する場合は、本人の申出があれば一括徴収を選べますが、申出がなければ、残りの税額は普通徴収に切り替わり、市区町村から届く納付書で自分で納めることになります。

退職月ごとの原則的な扱いを整理すると、次のようになります。

退職月区分 残税額の扱い
1〜4月退職 原則、最後の給与・退職手当から一括徴収
5月退職 その月の給与で年度分の徴収がほぼ完了
6〜12月退職 申出があれば一括徴収、申出がなければ普通徴収に切替

ここで示したのは地方税法上の原則的な枠組みです。一括徴収の要件や、申出書の様式・提出期限といった運用の細部は、勤務先や自治体によって異なるため、実際の手続きは退職前に勤務先の給与担当か、住んでいる市区町村へ確認してください。

手順3:退職金にかかる住民税は別に考える

退職金にも住民税はかかりますが、これは翌年に届く納付書とは別枠です。退職金の住民税は、翌年の納付書とは別に、支払い時点で徴収されます。「退職金の分も翌年まとめて来るのでは」と考えている人は少なくありませんが、そうではありません。

総務省によると、退職所得は他の所得と分離して課税されます。税率は10%(市町村民税6%+道府県民税4%)で、退職金を受け取る際に差し引かれるのが原則です。

退職所得控除の考え方

課税対象は退職金の全額ではありません。国税庁のタックスアンサーによると、勤続年数に応じた退職所得控除額を差し引いた残りの、さらに1/2が課税標準になります。控除額を確認する前提として、自分の退職金はいくらもらえるのか|平均額より先に確認する4つの手段と見落としやすい点も参考にしてください。

なお、特定役員退職手当等や短期退職手当等については、この1/2の計算が適用されない例外があります。適用条件は個別の事情によって異なるため、ここでは断定しません。

所得税側の源泉徴収や確定申告の要否については、退職金に確定申告は必要か|申告書の提出有無で変わる税額と50代が確認する3点で扱っています。

手順4:翌年の納付スケジュールと資金を準備する

普通徴収に切り替わった場合、市区町村から届く納付書で、年4回程度の納期に分けて納めます。税・社会保険の1年分を、退職金の使途を決める前に別枠で確保しておくことが大切です。具体的な納期の月は市区町村によって異なります。

ここで見落としやすいのが、税額のタイミングのズレです。退職翌年の6月頃に届く通知は、前年、つまり在職中の所得をもとに計算されています。収入が下がった年に、在職中と同じ水準の税額を払うことになるわけです。

さらに、退職後は住民税だけでなく、健康保険料や国民年金保険料も新たに自己負担となる場合があります。厚生労働省・日本年金機構によると、退職後は国民健康保険や国民年金への加入手続きが生じることがあります。住民税とあわせて、次の費目を1年分の目安として確保しておくと安心です。

これらは、退職金の使い道を決める前に、まず別枠で確保しておくべき固定支出です。

住民税が払えないときの相談先の見分け方

納付書の金額を見て、期日までに用意できないと分かることもあります。住民税には、徴収猶予・分割納付という制度があり、相談窓口は市区町村の税務担当(徴収課)です。猶予が認められるかどうかの条件は、個々の事情によって判断が分かれるため、ここでは断定しません。

まず確認すべきは、届いた税額そのものが正しいかどうかです。これは市区町村や税務署、税理士に確認する領域で、退職金の課税標準や控除の当てはめ方に疑問があれば、そこに相談します。

一方、税額が正しいとしても、退職金の使い道全体を含めた資金計画をどう立て直すかは、また別の判断になります。税額の計算と資金計画の見直しは、相談先が別です。税務の窓口は税額を確定させる場ではあっても、貯蓄・保険・住宅ローンを含めた家計全体の組み替えまでは担いません。

どの相談先を選べばよいか迷う場合は、50代のお金の相談先はどこがいい?収益構造で見る4類型と選び方で整理した4類型が参考になります。すでに住宅ローンが残っている場合は、退職金で住宅ローンを一括返済すべきか|50代が繰上返済の前に確認する4つの判断材料もあわせて確認してください。

まとめ

退職後の住民税は、前年の所得をもとに翌年へ持ち越して課税されます。ここまで、退職前に確認しておきたい4つの手順を見てきました。

手順1は、住民税決定通知書で今の年税額を確認することです。年税額から天引き済みの額を引けば、退職時点で残っている税額が分かります。

手順2は、退職月によって残税額の扱いが変わることを知ることです。1〜4月退職は原則一括徴収、6〜12月退職は申出の有無で一括徴収か普通徴収に分かれます。

手順3は、退職金にかかる住民税を翌年の納付書とは別に考えることです。退職金の住民税は支払い時点で徴収されるものであり、翌年の納付書に上乗せされるわけではありません。

手順4は、翌年の納付スケジュールと資金を準備することです。普通徴収に切り替わる場合は年4回程度の納期に分かれ、健康保険料・国民年金保険料もあわせて1年分を別枠で確保しておく必要があります。

まず取るべき行動は、自分の住民税決定通知書を実際に確認し、年税額と天引き済み額から、退職後に残る税額を自分の数字で把握することです。

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