この記事の要点
- 費用は4種類、確認場所は交付目論見書の「ファンドの費用・税金」欄
- 比べるときは、同じ投資対象どうしで並べる
- 費用の低さだけで選ばない
退職金やNISAで投資信託を検討していると、「手数料がかかる」とは聞くものの、実際にどこにいくらかかっているのかが分からないまま話が進むことがあります。窓口で「手数料はかかりません」と説明されても、それが購入時・保有中・売却時のどの費用を指しているのか、確認できないという声も少なくありません。
投資信託の費用は、買うとき・持っている間・売るときという3つの場面に分かれ、購入時手数料・信託報酬(運用管理費用)・信託財産留保額・その他の費用の4種類があります。このうち保有中にかかる信託報酬は、日々の基準価額から差し引かれる仕組みのため、請求書や明細として届くことがなく、気づかないまま払い続けやすい費用です。
この記事では、費用の種類と発生する場面を整理したうえで、交付目論見書のどこを見れば確認できるのか、そして勧められた商品どうしを比べるときの手順を見ていきます。特定の商品を推奨する記事ではありません。
投資信託の費用は、発生する4つの局面に分かれる
資産運用業協会(2026年4月に投資信託協会と日本投資顧問業協会が合併して発足)は、投資信託にかかる費用を「購入時手数料」「運用管理費用(信託報酬)」「信託財産留保額」「その他の費用」の4種類に整理しています。
これらは、費用が発生するタイミングで次のように分かれます。
- 購入時にかかる費用:購入時手数料
- 保有している間ずっとかかる費用:運用管理費用(信託報酬)
- 売却時にかかる費用:信託財産留保額
- 保有中に随時かかることがある費用:その他の費用(監査費用・売買委託手数料など)
つまり投資信託の費用は、買うとき・持っている間・売るときという3つの局面に、4種類の費用が振り分けられています。このうち保有中ずっとかかる運用管理費用(信託報酬)は、日々の基準価額から差し引かれる仕組みです。
3つの局面と4種類の費用を整理すると
窓口で「手数料はかかりません」と説明された場合も、それが4種類のどの費用を指しているのかを確認しないと、実際には別の局面で費用がかかっていることに気づけません。次の章から、この4種類を1つずつ確認していきます。
退職金の運用先を検討する段階の整理は、退職金2000万円、銀行に相談する前に整理すべきことでも取り上げています。
①購入時手数料:買うときにかかる費用
資産運用業協会は、購入時手数料を投資信託の費用の一つとして挙げています。名前のとおり、投資信託を購入するときにかかる費用です。
同じ投資信託でも、購入時手数料がかかる商品と、かからない商品があります。手数料がかからない商品は「ノーロード」と呼ばれます。
- 購入時手数料がかかる商品:購入するときに一定の費用を支払う
- 購入時手数料がかからない商品(ノーロード):購入時の費用は発生しない
購入時手数料の上限率は、商品ごと、そして同じ商品でも販売会社ごとに異なることがあります。窓口で提示された率が高いのか低いのかを、この段階で一般的な相場と比べて判断することはできません。
手数料率は販売会社で異なる
「購入時手数料は◯%が一般的」といった頻度や多寡についての基準は、資産運用業協会・金融庁のいずれにも示されていません。窓口で提示された購入時手数料が何%なのかは、次章で扱う信託報酬とあわせて、交付目論見書で確認する対象になります。
②信託報酬:保有中ずっと引かれる費用
資産運用業協会は、運用管理費用(信託報酬)を、投資信託を保有している間ずっとかかる費用として挙げています。ファンドの運用・管理にあたる費用で、保有している限り発生し続けます。
信託報酬の特徴は、支払い方にあります。購入時手数料のように窓口でまとめて支払うのではなく、信託財産(ファンドの資産)から日々差し引かれる仕組みです。
- 購入時手数料:購入するときに、窓口で支払う
- 信託報酬(運用管理費用):保有している間、信託財産から日々差し引かれる
このため信託報酬は、請求書や引き落としの明細として届くことがありません。窓口で「別途の請求はありません」と説明されても、保有している間ずっと信託財産から差し引かれていることに変わりはなく、気づかないまま払い続けやすい費用です。
気づかないまま払い続ける仕組み
年率で示される数字自体は小さく見えても、差し引かれるのは保有している間ずっとです。保有期間が長くなるほど、負担する総額は積み上がっていきます。次章では、必ずしもすべての商品にあるわけではない信託財産留保額と、その他の費用を確認します。
③信託財産留保額と④その他の費用
資産運用業協会は、購入時手数料・信託報酬のほかに、信託財産留保額とその他の費用も投資信託にかかる費用として挙げています。この2つは、購入時手数料や信託報酬とは違う特徴があります。
- 信託財産留保額:換金(解約)時に発生する費用。資産運用業協会は、差し引かれる商品と差し引かれない商品があると説明しており、すべての投資信託に設定されているわけではありません
- その他の費用:監査報酬・売買委託手数料など、運用にともなって発生する費用
信託財産留保額は、すべての投資信託にあるとは限りません。「換金するときに費用がかかるかどうか」は、商品ごとに確認する必要があります。
その他の費用のうち、監査報酬は決算ごとに監査法人へ支払う費用で、事前に金額を示すことができます。一方、売買委託手数料は運用の結果として発生する費用のため、資産運用業協会は、事前にいくらかかるかを示すことはできないと説明しています。
監査報酬と売買委託手数料の違い
ここまでで、投資信託の費用は4種類あり、信託財産留保額の有無や、その他の費用のうち事前に示せるものと示せないものがあることを確認しました。次章では、これら4種類の費用を実際にどこで確認できるのか、交付目論見書の記載箇所を見ていきます。
費用はどこに書いてある?交付目論見書の確認欄
投資信託を購入するとき、販売会社は交付目論見書を交付します。金融庁は、投資信託の販売時に交付目論見書が交付される仕組みを説明しています。
4種類の費用は、この交付目論見書の中にまとめて記載されています。資産運用業協会によると、交付目論見書には「ファンドの費用・税金」という欄があり、購入時手数料・運用管理費用(信託報酬)・信託財産留保額・その他の費用が、この欄に記載されています。
窓口で「手数料はかかりません」と説明された場合は、次の手順で確認できます。
1. 交付目論見書を受け取る(または請求する)
2. 「ファンドの費用・税金」欄を開く
3. 購入時手数料の有無と率を確認する
4. 運用管理費用(信託報酬)の率を確認する
5. 信託財産留保額の有無を確認する
「手数料はかかりません」という説明は、4種類のうち1つの費用だけを指している場合があります。この欄を開けば、どの費用がかかり、どの費用がかからないのかを、まとめて確認できます。
1つの費用しか指していない場合
説明を口頭で聞くだけで終わらせず、交付目論見書の該当欄に何と書いてあるかを、自分の目で確認することが手順の起点になります。
次の章では、同じ指数に連動する商品どうしで費用を比べるときの手順を見ていきます。
同じ指数の商品でも費用が違う、比べ方の手順
同じ指数(たとえば国内株式の代表的な指数)に連動する投資信託でも、運用会社によって信託報酬が異なることがあります。窓口で1本だけを提示されても、それが同じ条件の商品の中で高いのか低いのか、単独では判断できません。
比べるときは、次の手順で確認します。
1. 連動する指数(投資対象)が同じ商品どうしを並べる
2. 交付目論見書で、運用管理費用(信託報酬)の率を確認する
3. 購入時手数料の有無もあわせて確認する
投資対象が異なる商品どうしを比べても、費用の高低だけでは参考になりません。たとえば、国内株式に連動する商品と、海外株式に連動する商品では、運用のコスト構造自体が異なります。まず同じ投資対象の中で並べることが、比較の起点になります。
投資対象が違えば比較の意味がない
金融庁は、NISAのつみたて投資枠の対象商品について、信託報酬の水準に関する要件を定めています。具体的な率は商品の区分によって異なるため、比較の際は金融庁の公表資料での確認が必要ですが、対象になっているかどうかは、水準を測る一つの物差しとして使えます。
50代から新NISAを始めるのは遅いかでは、始める時期について整理しています。自分で比べても判断がつかない場合は、50代のお金の相談先はどこがいい?で、相談先の選び方を確認できます。
費用差は取り崩しまでの期間でどう効くか(試算例)
信託報酬の差は、保有する期間が長いほど負担額の差として積み上がります。ここでは投資額100万円をそのまま保有すると仮定し、運用による増減は考慮せず、信託報酬のみを一定金額にかけて試算します。実際の運用成果を予測するものではありません。
| 信託報酬(年率) | 10年間の費用合計 | 20年間の費用合計 |
|---|---|---|
| 年0.5% | 5万円 | 10万円 |
| 年1.7% | 17万円 | 34万円 |
同じ100万円を同じ期間保有しても、信託報酬の差だけで20年間の負担額に24万円の開きが生じる計算になります。取り崩しまでの期間が長い50代ほど、この差は無視できません。
20年間で24万円の差が生まれる
取り崩しまでの年数から資産配分を考える手順は、50代の資産運用はどこまでリスクを取れるかで扱っています。
NISA口座で保有していても、この費用の負担が軽減されるわけではありません。金融庁は、NISA口座の非課税の対象を分配金・譲渡益としており、費用は非課税の対象に含まれていません。
費用を自分で確認できるようになると、窓口で勧められた商品が妥当かどうかを判断しやすくなります。そのうえで誰に相談するかを決めたい場合は、NISA・iDeCoを誰に相談すべきかで相談先ごとの違いを整理しています。
まとめ:費用を確認してから比較する
投資信託の費用は、購入時手数料・信託報酬(運用管理費用)・信託財産留保額・その他の費用の4種類に分かれます。このうち信託報酬は保有中に日々差し引かれる仕組みのため、明細として届かず気づきにくい費用です。
確認する場所は、交付目論見書の「ファンドの費用・税金」欄です。窓口で「手数料はかかりません」と説明された場合も、この欄を開けば、4種類のうちどの費用がかかり、どの費用がかからないのかをまとめて確認できます。
この記事の結論
- 費用は4種類、確認場所は交付目論見書の「ファンドの費用・税金」欄
- 比べるときは、同じ投資対象どうしで並べる
- 費用の低さだけで選ばない
比べるときは、同じ投資対象の商品どうしを並べ、信託報酬の率と購入時手数料の有無を確認します。ただし、費用の低さだけで商品を選ぶと、投資対象や分配方針が自分の目的と合っているかを見落とすことがあります。
投資信託は、費用のほかに、投資対象・分配方針・純資産総額といった点もあわせて見る必要があります。これらは費用の確認とは別の判断軸であり、費用を確認したうえでの、次の検討材料になります。
費用以外に見るべき判断軸
退職金の運用を検討している場合は、退職金の運用でよくある失敗は何かもあわせて確認してください。

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